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Gil-Martinの部屋Gil-Martinの愛する音楽、感じたことなどなど
***当ブログに掲載されているすべての文章の無断転載、転用を禁止します*** 2011.08.23 Tuesday
素晴らしき人生を振り返って Any Colour You Like
非常にお久しぶりです。とは言っても、誰に対してお久しぶりかわからないくらい、見ている人なんていないのだとは思うのですが。 ブログを離れている間はふつうにブログのない生活していたので、もう二度と戻ることはないんだろうなと思っていました。それでも置いておいたのは、どうやら歌詞の和訳を探してこのサイトに辿りつく人もいるようなので、消す必要はないかと考えたからです。誰かの役に立つなら、願ってもないことですし。そこへかつて一度、記事を書いたことのあるBlackのベスト盤が出るということで、彼のインディ・レコード会社からブログ上でレビューを書きませんか、というメールが来たのです。ブログってすごいねー、なんてひとしきり感心した後で、これをいい機会に1ヶ月に1度くらいの更新(目標はあくまでも低く)を目指して復帰しようと思った次第です。あれからたくさんの新しいアーティストが現れ、よいアルバムが発表されました。でも、やっぱり愛しているのはNick CaveとPJ Harvey, そしてTori Amos(少々愛は減り気味ですが)なのです。そこは不変。
Blackまたの名はColin Vearncombeは、かつて日本以外の国を知らず、日本語以外の言語が不自由だったころの私にヨーロッパや英国に対する漠然とした憧れを具現化したイメージを見せてくれた人だと言えます。多くの人が同じような感想を持っているようです。歌詞を聴けば、それほど「ああ、憧れのヨーロッパ」な話ではないのですが。 このヨーロッパに対する漠然とした憧れは間違っていたわけではありませんが、正しかったとも言えません。彼のビデオクリップのなかで展開されたような世界は存在するし、ヨーロッパの人たちにとって過去となってしまっているわけでもない。ヨーロッパや英国(英国はヨーロッパの一部であることには間違いありませんが、大陸の一部でもなく、ユーロも使ってないという意味ではちょっと違う)、ひいては米国に対するわたしたちの抱く幻想には、往々にして現実の生活を生きる人々の姿を欠いていることが多いと言えるでしょう。そして、その幻想のもう一つの大きな欠点は、そのイメージの中に自分たちを置いてみることを怠っていることから生じます。その場所に実際に行ってみると、現実の生活を生きる人々の姿を見ることになり、その上でその現実の生活を生きる人々の世界観の中にわたしたちの場所を位置づけられてしまうことで、幻滅を感じることになります。その位置づけは多くの場合、非常に不当なものであったり、偏見の上に成り立っているものだったりします。しかし、自分という存在が自己定義によってのみ成り立つのではなく、他者による視点や位置づけによって構成されてもいるということを考えれば、不当な位置づけも事実の一部として受け止めなくてはならないのです。そういう意味では、わたしたちが抱く漠然とした憧れのヨーロッパや英国はわたしたちにとって「現実には」存在しないと言えるでしょう。そのイメージはその文化において中心に位置する人のみが、素直に受け取ることができるものなのです。 ・・・少々抽象論になってしまいました。ここで「現実の生活を生きる人々」という表現が婉曲表現であり、実はそれが社会の端に存在する下層階級やマイノリティのことを指していることに書いてからすぐに気づきました。それを婉曲表現にしてしまう自分の偽善者ぶりに愕然とします。教育を受ける機会が少ない下層階級の人々はより強い偏見を持つことが多いのは事実です。それに対して、教養ある人々は、ついついリベラルな思想と政治的正しさによる罪悪感から周縁に属する人々(これは当然、下層階級の人々と同時に、わたしたち非白人をも指します)に対してより寛容な態度を取りがちです。そういう意味で、教養ある人々たちだけが生きる限られた場所ではない街角、道端=現実が偏見と限られた知識を反映していると言えば、現実です。もちろん、中産階級以上の教養ある人々も現実を生きているに違いないのだから、こう書いてしまうことには厳密には誤りであるのですが。ところで、こんなことは全くBlackとは関係ありませんでしたね。 彼の大ヒット曲であり、代表曲である"Wonderful Life"について書いた記事はこちらへ。彼の"Wonderful Life"が名作だったことに誰も疑問をはさむことはできないでしょう。でも改めて聞いてみると、最初のシンセサイザーの音が80年代な感じです。新しいアルバムAny Colour You Likeに収められているのは、2002年版なのに…。ここは絶対、生ストリングスを使うべきだと思います。 このベスト盤Any Colour You Likeは、9月5日発売。彼のウェブサイトによると、ウェブサイトだけでなく、アマゾンやiTunesからダウンロード発売が主になるそう。通常のCDという形態も「コレクターのために」制作はするそうです。わたしは今でもCDという形態で買うのが好きです。ダウンロードだけで買う場合は、全アルバムが欲しいときではなく、曲だけが必要だったりする場合が多いです。1つの作品として見るためには、物質的に形のあるものとして1つとして感じたいからでしょうね。 このアルバムは、彼のメーリングリストに入っている人々の投票で選ばれた曲で構成されているようです。従って、わたしなんかよりもずっと彼の曲を深く愛し、彼のキャリアをしっかりと見守ってきた人々による選曲と言えるでしょう。最初の2枚のアルバム以来、2006年にブログの記事を書くまでBlack/Colinのことは何も知らなかったわたしなので、本当のファンの人々に比べると愛情は全然足りないし、アルバムに収録されている16曲中3曲以外は未聴でした。従って、公平ではないかもしれませんが、やはり "Wonderful Life"を超える曲はありません。彼の今の年齢を考えると、"Wonderful Life"により重みがあるのは確かです。 よい曲がないわけではないのですが、ストレートによい曲で耳には優しいけれど、忘れてしまいそうな曲が多い印象です。歌詞にひねりがあっても(あることが多いのですが)、サビがストレートすぎることも多い気がします。従って、ひねりどころか、少々、変態の気がある(?)2枚目のアルバムの曲、 "Let Me Watch You Make Love"のような曲のほうが印象に残ります。タイトルとして印象に残るのは、"Her Coat and No Knickers"です。歌としては言うべきことがないくらいありがちなんですが、 "knickers"って・・・(現代イギリス英語ではブルマーではなく、女性用下着一般のことらしいです)。通常触れるのがアメリカ英語であるわたしには非常におかしな言葉であり、これがユーモアなのかどうかさえよくわかりません。
変態の気はないけれど、今回、印象的だったのは、2009年のアルバム、Water on Stoneに収められていた曲 "Tomorrow is Another Night"です。いきなり「お願いだから、黙ってくれよ」という歌詞で始まります。うわー、なんだか気まずいところに来ちゃった、とまるで知り合いのカップルが喧嘩しているところに顔を出してしまったような気になります。新アルバムに収められているものは、リミックス版となっています。そしてそれはなぜかところどころJungle/ Drum and Bassのリミックスなのです。その手の音楽にのめりこまなかったわたしとしては、今、なぜDrum and Bass? それって90年代じゃ? と思うのですが、今も存在し続けているらしいので、それほど時代遅れではないのかもしれません。元のWater on Stoneのほうも(サンプルを)聴いてみましたが、オリジナルのアレンジのほうが好きなような気がしてきました。そして、サンプルだけしか聴けませんでしたが、こちらのアルバム、なかなかよいかもしれません。かなりダークな色合いが濃く、素晴らしい人生をただただ賞賛しているのではない態度が見られます。そして何よりも直球な(でもカッコのなかでねじれている)タイトル、 "I Hate You (Don't Leave)"という曲はかなりの低音ボーカルであることも相俟って、Leonard Cohenをほうふつとさせます。もちろんColinのほうが断然歌はうまいですから、とてもよい曲なのかもしれないと期待しています。 Any Colour You Like全体の感想としては、耳に優しい感じです。上にも述べたようにBlackの歌詞はどちらかと言えばダークな側面があるにも関わらず、素直なサビに収まってしまう傾向があって、そういうものは特にどうしても印象に残りません。・・・というか、選曲をした人たちとわたしの好みが違っている可能性があるような気がしてきました。サンプルだけを聴いてみた結果、Water on Stoneの8曲中、5曲くらいはかなり好きです。このように、この新アルバムの収穫はアルバムそのもの以外のところにあります。これを聴くことによって彼の知らなかったアルバムを聴くきっかけになる、という点で聴く価値はあるし、何よりもわたしが気に入った曲が2009年のアルバムからの曲という事実は、これからのBlack/Colin Verncombeに多いに期待を抱かせてくれるものです。これが90年代初頭のものだったりすると、この新アルバムを聴いてこれで終わり、ということになってしまいますが、2009年の時点でもよい曲を書き、演奏している、ということは、彼がこれからもよいアーティストとして活動していくことができると思うのです。彼の素晴らしき人生は、これからも素晴らしい人生になるのではないのでしょうか。 Tomorrow is Another Nightの原詩はこちら。 明日はまた別の夜 歌詞:Colin Vearncombe 訳:Gil-Martin お願いだから黙ってくれないか? 少なくともここにいるうちに一人は落ち着かなくちゃならないね その冷たくて古い考えは自分の中にしまって、しだいに 色あせてさせてしまえばいい そうしたらたぶん、うまくやっていけるだろう ベイビー、やっていけるだろう 明日はまた別の夜 君は僕の心を傷つけた 僕の歌を奪った ベイビー、うまくやっていこうよ 君はただ彼の服や腕やベッドのなかの 初めての女じゃないってことにイライラしているだけだ 彼がそのほかの誰かを愛することになったら 彼をもっと必要としなくなると思うかい? そんなことより、そう、うまくやっていこうよ ベイビー、うまくやろうよ 明日は別の夜 君は僕の魂を傷つけた 歌を奪った ベイビー、うまくやろうよ *アーティスト:ブラック・コリン・ヴァーンコム 作品:エニー・カラー・ユー・ライク/ウォーター・オン・ストーン 「トゥモロー・イズ・アナザー・ナイト」 |
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