Gil-Martinの部屋

Gil-Martinの愛する音楽、感じたことなどなど

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オーストラリアの荒野から
わたしの新しいCDレヴューももうそろそろ終わりに近づいてきました。またCDオーダーすべきかなあ。なんだか最近、CD屋さんに行くとすっかり何が欲しかったか忘れて焦ってしまうので、オンライン派です。……てなことはさておき、今回は、何が新しいわけ? と言われてもしかたありませんが、またまたNick Caveです。お前がNick Caveが好きなのはわかったから、と言われてしまうのかもしれませんが……だって、好きなんだもん。
Proposition - O.S.T. (Dig)
Proposition - O.S.T. (Dig)
今回のは、いつもと違って、Nick Cave & the Bad Seeds名義ではなく、Nick Cave and Warren Ellis。とは言えWarren EllisってThe Bad Seedsじゃーん、と思う人は、わたしと同程度のNick Caveのファンだと思われます。同じくオーストラリア生まれのヴァイオリニストにして、The Bad Seedsから1995年に参加しているWarren Ellisが前面に出た、The Propositionは映画のサウンドトラック。でもただの映画のサウンドトラックではございません。Nick Caveが脚本を書いた映画のサウンドトラックなのです! もうNick Caveづくし。Nick Cave祭り状態です。

もともとNick Caveは文字による創作に興味があるようですが、映画にも大変、縁が深いアーティストです。まったくこの種の音楽に見向きもしない人たちにさえ、名を広く知らしめたのが、『ベルリン・天使の詩』(英語題:Wings of Desire)。ヴィム・ヴェンダースの名作ですね。……なんて言ったけど、わたしはこの映画を一度も最後まで見たことがありません。もう眠くて、眠くて。Nick Caveが歌っているのが映る頃に一度眼を覚まして、前後の脈略がわからないまま、あれー、Nick Cave、何してるの? と思ったりするのが、わたしのこの映画鑑賞の記憶です。もちろん、こんなこと、昔は言えませんでした。ヴェンダースが退屈だっていうなんて、あなたには映画っていうものがわからないのね、なんていわれそうで。でも、もう(トシのせいなのか)怖くないので堂々と言います。あの映画はほんとに眠い。ぐー

その他にもたくさんの映画で彼の曲は使われていますが、個人的に受けたのが、"Red Right Hand"がScream(『スクリーム』)シリーズに使われたことですね。Murder Balladsからの曲が使われていればいかにも、という気がしますが、"Red Right Hand"自体は実はその前のアルバム、Let Love Inに収録されています。わざわざMurder Balladsから探さなくても、彼はホラー映画にぴったりの歌をいくらでも歌っているということか。彼ほどホラー映画のテーマ曲を歌うのにうってつけの人はいませんよね。なおかつScreamという映画が正統ホラー映画でありながら同時にパロディでもあるところが、彼のどこか皮肉な姿勢に通じていてぴったりだと思いました。

TheProposition
ともかく、一つの当然の帰結ともいえるNick Cave脚本のこの映画、The Propositionは、彼の故郷であるオーストラリア、19世紀末のアウトバックを舞台にした映画。ならず者で荒くれ者のBurns四兄弟は、農場を襲い、レイプ、殺人、極悪非道の限りを尽くしています。そのうちの二人、CharlieとMikeを捕えたCaptain Stanleyは、Charlieにリーダーである長兄のArthurを殺せば、罪を赦し、Mikeの命を救ってやるという提案(the proposition)を持ちかけます……。っていう話みたいです。ともかく、オーストラリア版ウェスタン(?)のようですね。

これがいつどこで見られるのか、さっぱりわかりません。知ってる人、教えてください。日本で公開されるのでしょうか? オーストラリアでは去年公開、イギリスでは3月から、アメリカではただ春、となってました。Guy Pearceに、Emily Watson、John Hurtと日本でもミニシアターなら十分、集客力のある俳優陣です。というか、この俳優たちなら、Nick Cave脚本じゃなくても、わたしは映画館まで見に行くよ? ね、みんなも行くよね?

イギリスのサイトでトレイラーなどをご覧ください(オーストラリアのサイトはもう存在せず)。みんなかなり薄汚れ、髪の毛は張りつき、土埃、汗、血まみれです。ちょっとグロいかも。サントラの曲もいくつか聴けます。Enterを押してサイトに入ると、音が流れますので注意。
http://www.theproposition.co.uk/

そして本題のサントラのほうですが、もちろん文句なしです。あくまでもサウンドトラックなので、彼の歌よりは音が主役ですけれど、彼の叙情的な部分がうまく行かされてよい出来になっています。荒涼としたオーストラリアの大地が眼に浮かぶようです。より雰囲気を重んじ、Nick Cave自身の声の代わりに、Warren Ellisのヴァイオリンが哀愁を歌い上げるところが魅力となっています。

ということで、アルバムにも歌詞がついておらず、オンラインでも歌詞が今のところ見つかりませんので、今回は雰囲気を楽しんでもらうアルバム、ということからも、訳詞なし。

おまけでNick Caveのさまざまなコンサートからの曲を聴くにはこちらのサイトから。
http://www.nick-cave.com/_audio.php

*アーティスト:ニック・ケイブ & ウォレン・エリス
 作品:「ザ・プロポジション オリジナルサウンドトラック」
| gil-martin | 音楽 | 20:18 | comments(0) | trackbacks(0) |
都落ち
少々ご無沙汰でした。いやいや、一度始めたものは頑張って続けなくてはなりませんね。今日は引き続き、(わたしには)新しいCDレビュー。Shannon WrightのDyed in the Woolより、"Hinterland"です。
Dyed in the Wool
Dyed in the Wool

曲はこちらから
"Hinterland" (from Dyed in the Wool, 2001)

このアルバムは、Shannon Wrightの2001年のアルバム。一番、最近では2004年のOver the Sunというアルバムがあります。ネットで聴ける曲を視聴してみた結果、気に入った曲が多かった2001年のDyed in the Woolを買ってたのですが。結果、まったく外れなし。一曲もfillerがない(ああ、お粗末な日本語。間に合わせがない、と言えば、いいかな)。

フォーク・ロック、インディ・ロックと言えばいいと思いますが、彼女の魅力はひたむきでまっすぐな歌声。マイナーな曲調に乗せられて研ぎ澄まされた感覚が光ります。これほどクオリティが高ければ、もっともっと売れてもいいと思うのですが。こういう種類の女性シンガーの場合、自己満足、自己陶酔の傾向が見られて、結局は90年代以降の三大女性シンガーソングライターの二番煎じに甘んじてしまいがちなのですが、彼女の場合はそれに留まらない才能があると思います。なのに、知名度が低いのは、レコード会社に恵まれていないのか、それとも今ひとつビジュアル的にインパクトが足りないのか。

彼女はフロリダ、ジャクソンヴィル出身。1995年にCrowsdellというバンドを組んで、ニューヨークに出てきます。ところが、お決まりのレコードレーベルとの揉め事で、ショウビズに嫌気が差した彼女は、すべての持ち物を売り払ってノース・キャロライナの田舎へ引越します。そこで、彼女はソロとして曲を録音し始めたそうです。1999年に最初のソロアルバム、Flightsafetyを出して以来、2004年のOver the Sunまで通算、5枚のアルバム、ミニアルバムを発表しています。

彼女のオフィシャルサイト
http://www.knowwave.com/shannonwright/
彼女のファンサイト
http://www.quiltofdemand.org/

一度、すべてを捨てたからか、彼女の音楽には無駄がありません。自分自身で、ピアノ、ギター、ハーモ二ウム、オルガン、ベースなどの楽器をこなし、変に凝った音の冒険はしていません。そして、1曲の長さは通常、2分から3分のあいだでコンパクトにまとまっています。

なので、歌詞もとても短い。物語を語らずにイメージだけを表現します。本当は詩が苦手で、詩のなかでは物語があるballadsが好きなわたしにはかなり訳すのが難しいアーティストです。なので、意味不明でもご容赦を。もともとかなり意味不明です。

この歌詞でわたしが好きなところは、うら淋しい地に落ちていくのだ、と決意のように歌うところでしょうか。そこで彼女は心のなかからボロボロと崩れていくのだ、と歌います。それは都落ちをして、ノース・キャロライナに引っ込んだときの彼女の想いだったのでしょうか? それからかなり経って書かれた歌であることを思えば、違うかもしれません。でも、彼女はこれだけよい音楽を作り出しているのだから、ノース・キャロライナに引っ込んですっかり洗い清められた思いだったことは確かでしょう。

ネット上で聴ける彼女の曲(曲名をクリックして視聴)
Rich Hum of Air (from Flightsafety, 1999)

Dirty façade (from Maps of Tacit, 2000)

Within the Quilt of Demand (from Maps of Tacit, 2000)

Azalea (from Perishable Goods, 2001)

Foul (from Perishable Goods, 2001)

Less than a Moment (from Dyed in the Wool, 2001)

The Path of Least Persistence (figure II) (from Dyed in the Wool, 2001)

Little Black Stray (from Over the Sun, 2004)


淋しい場所
作詞: Shannon Wright
訳詞: Gil-Martin

ほら、その青あざがついた眼をじっくり見てみましょう
そしてこの美しい景色を汚してやりましょうよ
ほら、明かりを踏み潰してやりましょう
これもすぐに変化することになるのだから

寂れた地、そこにわたしは落ちていく
淋しい場所、そこでわたしは内側からボロボロ崩れていく

わたしは何も感じないはず
そして洗い清められるはず

*アーティスト:シャノン・ライト
 作品:ダイド・イン・ザ・ウール
    「ヒンターランド」

| gil-martin | 音楽 | 21:38 | comments(0) | trackbacks(0) |
頂上からふもとまで
"Landslide" by Fleetwood Mac

新しい歌でもなく、何があったのでもないのですが、ふと、この名曲について書きたくなりました。恐らく別れを歌った曲の傑作のひとつに数えていいと思います。

“Landslide”は往年の名バンド、Fleetwood Macの代表曲です。このバンド、ポップ・ロックバンドと呼べばいいのでしょうか。心臓病チャリティーのツアーで再結成したとき、(人にチケットをもらったので)見に行ったことがあるのですが、周りは見事に太めの(というか、肥満の)白人の四十代以上のオッサンとオバサンばかりでなんだか哀愁を感じてしまいました。オッサンとオバサンは心からヒット曲の数々を堪能してらっしゃいましたが。
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ともかく、Fleetwood Macというのはよくわからないバンドで、Fleetwood Macという名前自体はドラマーのMick FleetwoodとベーシストのJohn McVieから来ているにも関わらず、一番重要かつ有名なメンバーは途中から参加したシンガーStevie NicksとギターリストLindsey Buckingham。そしてもっとややこしいのが、もう一人のシンガー、Christine McVieはもちろんJohn McVieと一時期、結婚していて(結婚したからメンバーになったのですが)、Stevie NicksとLindsey Buckinghamは長年、恋人同士でした。バンドのなかで二組もカップルがあったら、そりゃあ、いずれ駄目になりますよねえ。わたしの持論は、プライベートとお仕事は別にすべき。同業者は避けたほうがいいと思います。後で気まずいでしょ?

この曲は、1975年のアルバム、Fleetwood Macに収められているStevie Nicksの手による曲です(Fleetwood Macは曲を書いた人がボーカルを取るシステム)。解釈はさまざまあって、Lindsey Buckinghamと別れようとしたときに書いた曲である(が、そのときはおそらく実際には別れなかった)とか、父親の元を離れて独立していくときに書いた曲だとか言われています。何はともあれ、その後、Fleetwood Macに参加する前から音楽上、私生活上のパートナーだったLindseyとStevieが別れたのは事実で、この曲を彼女とLindseyの関係を歌った曲だと思うとより感慨深いですね。

彼らは再結成コンサートでも仲良くやってましたし、この再結成ツアーまでの流れを密着したテレビ番組でもいろいろ揉めつつもなんとかまとまっていく様子が描かれていました。あれほどの大人になると、悟ることができるんでしょうね。この曲では、二人のあいだに流れた時間、そして時間のせいでどうしようもなく起こる変化について歌っているわけですが、その時間と変化がまた二人を大人の人間として、職業上のパートナーとしてうまくやっていくことを可能にしているのでしょう。とは言え、昔別れた女が歌う別れの曲でギターを弾くLindsey Buckinghamには少々、複雑な思いがあるのではないでしょうか?

これは、Tori Amosが好んでコンサートで演奏する曲でもあります。一番好きと言っていたかもしれません。しばらく休止状態で、もうなくなってしまったのかしらと心配していた、Tori Amosのコンサート音源を配布しているサイト、Diagnosed Soundがこの前、見たら復活していたので、そのサイトからTori Amosバージョンもどうぞ。 "Landslide" by Tori Amos

この曲のよいところは、別れによって起こる変化を詩的に、かつ的確に表現しているところだと思います。恨みつらみやら未練といった感情に集中することなく、別れという出来事をイメージ豊かに歌っています。誰かと一緒にいるということは、自分の人生のなかにその彼の居場所を確保することであると同時に、自分の人生を彼の周りに構築していくということ。それは山に登るようなものなのです。でも、その彼と別れるということは、登ってきた山からずるずると滑り落ちてしまうこと。自分が描いていた人生設計図をまた別のものに描き直さないといけません。

登るのに要した時間に較べて、降りる時間の短いこと。足を一歩ずつ踏みしめることはなく、ずるずると下までアッと言う間に落ちてしまうのです。それは一歩ずつ踏みしめてきたあいだの時間と労力を考えれば、そしてそのあいだに自分がとった歳を考えれば、この別れがもたらす影響は恐ろしいこと。むなしいことです。でも、それでもまた、人は次の山に登るのでしょう。今度は雪崩が起きないことを願って。

原詞はこちらから

雪崩
(landslideは実際には地滑りであり、雪崩はavalancheですが、ここに描写されている山に雪がある、ということから雪崩にしました)

作詞:Stevie Nicks
訳:Gil-Martin

わたしは愛を胸に抱き、そしてそれを捨てた
わたしは山を登り、そして引き返した

わたしは雪に覆われた丘に映った自分の姿を見つめていた
雪崩がわたしをふもとまで引きずり降ろすまで

空はわたしを映す鏡
愛って何なのかしら?
わたしの心のなかに棲む子供がまた外に出てこれるかしら?
変わりつつある大海の潮のあいだを乗り越えていけるかしら?
わたしの人生にやってくる違う季節を受け入れられるかしら?

わたしは変化を恐れていた
なぜなら自分の人生をあなたの周りに創りあげてきたから
でも時間が経って、人は大胆になる
子供たちも大きくなる
わたしも歳を取った

わたしは変化を恐れてきた
だって、わたしは人生をあなたの周りに組み立ててきたんだから
でも、時間とともに人は次第に大胆になり
子供たちも大きくなる
わたしも歳を取った

だからこの愛はもう終わりにしましょう
もし山に登って、引き返し
雪に覆われた丘にわたしの姿が映るのを見たら
そう、雪崩があなたを下まで降ろしてくれる

もし雪に覆われた丘にわたしの姿を見たら
もしかしたら雪崩があなたを下まで導いてくれるかもしれない
そう、雪崩があなたを下まで引きずり降ろしてくれる

*アーティスト:フリートウッド・マック
作品:フリートウッド・マック
   「ランドスライド」    

| gil-martin | 音楽 | 20:48 | comments(4) | trackbacks(3) |
妄想のパリ
"Beautiful Boyz" by CocoRosie

さてさて、(わたしにとっては)新しい音楽のレビューです。なんだかすごく変な人たち、CocoRosie。見た目も結構変わってます。なんていったらいいんだろう。2005年発売の彼女たちの二枚目のアルバム、Noah's Arkのジャケットの裏にある写真では、二人とも、一時期、Gwen Stefaniが流行らせた(?)女性用ポンパドールみたいな髪型をしています。アルバムのジャケットも、一目見るとメルヘン、もう一目見るとすごく変。というか、ちょっと変態です。こういうジャケットのアルバム、普通は買わないんだけど。
Noah's Ark
Noah's Ark
CocoRosieはSierra RoseとBianca Leilaniという姉妹のグループです。どうやら生い立ちを読んでみると、両親は父、スピリチュアリスト、母、芸術家・教師ということになっているので、多分、ヒッピー/ニューエイジ系の両親なんでしょう。Biancaの方はネイティブ・アメリカンの伝統的生活めいたことも経験していると言っています。アメリカ人の二人はパリで音楽活動を始め、こんな不思議な音楽を作り始めました。ジャンルとしてはトリップ・ポップ、アート・フォークとかそういう感じ。
彼女たちのウェブサイト
彼女たちのレコード会社のウェブサイトはこちら
ビデオを見るにはこちら。"Noah's Ark"
オーディオのみ。 "La Maison de Mon Reve"
同じくオーディオのみ。 "Noah's Ark"
(ところでこのレコード会社 Touch&Go、気になるアーティストがかなりいます。 ! ! !(Chk Chk Chk)とかPinbackとかShannon Wrightとか。一気に有名になったYeah Yeah Yeahsもここなんですね。これらのバンドのオーディオ、ビデオもそのサイトから聴けます)

今日、取り上げるこの"Beautiful Boyz"はキャバレー風。ゲストのボーカルがAntony & the JohnsonsのAntony。この人のせいなのかもしれませんが、なんとなくこの曲、Marc Almondっぽいです。歌詞もそういう感じがします。このAntony & the Johnsonsも聴いてみたいところですね。Antony & the Johnsonsのサイトはこちらから

Marc Almondのイメージと言いましたが、歌詞内容やらCocoRosieの二人がパリで活動しているということを考えると、ジャン・ジュネの世界というほうが適当でしょうか? パリの退廃。といってもわたしは一度もパリには足を踏み入れたことはありません。万が一、わたしが実際にパリに行っても経験することはないだろうパリのイメージです。裏パリ(?)。街娼がいて、スリがいて、浮浪者のアル中(どんなものか見たこともないし飲んだこともないけど、アブサンを飲んで欲しいところ)、ヤク中が底辺の生活をする街。『ポン・ヌフの恋人たち』みたいな世界。でもやっぱり『泥棒日記』というほうがふさわしいかな。
泥棒日記
泥棒日記
ジャン・ジュネ, 朝吹 三吉

原詩はこちらから

美しい男の子たち
作詞: CocoRosie
訳:Gil-Martin

美しい男の子たち
美しい男の子たち

娼婦の子として
父の顔を知らずに生まれ
当たり前のように彼は孤児になった
ああ、彼はなんて美しいみなしごだったことか
そして彼は少年院に送られ
10歳のときに最初の輝かしい栄光を手にする
尼僧から盗みを働いて捕まったのだ
そして彼の愛の物語が始まった

30年彼は放浪し続けた
鳩の羽根を持った悪魔の子
足を踏み入れたすべての国で
監獄へと放り込まれた
ああ、彼はなんと監獄を愛したか
ああ、なんと監獄は恐ろしくも美しいところか

彼の最大の愛は成就した
純粋なるロマンスには誰も文句のつけようがない
天使のようなならず者と聖なる者たち
天使のようなならず者と聖なる者たち

美しい男の子たち
女衒に、ホモ、罪深いオカマたち
美しい男の子たち
船の刺青と涙の刺青

美しい男の子たち
女衒に、ホモ、罪深いオカマたち
美しい男の子たち
船の刺青と涙の刺青

*アーティスト:ココロジー
 作品:ノアズ・アーク
    「ビューティフル・ボーイズ」

| gil-martin | 音楽 | 20:37 | comments(2) | trackbacks(1) |
Death by Water
“Where the Wild Roses Grow” by Nick Cave with Kylie Minogue

この前、新しい音楽が聴きたい時期なのだと書きましたが、オーダーしたCDの第一弾がやっと到着しました。なので、そろそろ新しい音楽のレヴューも、と思うのですが、まだ消化し切れてないので、かなり消化できているこの曲を。おそらくNick Caveの曲としては、一番のヒットだったと思われるWhere the Wild Roses Growです。Kylie Minogueとのデュエットであること、そしてKylieの美しさをクローズアップしたビデオが何度も流されたことが幸いして、ヒットしたものと思われます。ビデオはこちらから

でも、今日の記事の題名には偽りありです。この歌では、Elisa Dayは水死するのではなく、石で頭を殴られて死にます。ところがこのビデオを見てもらうと、このイメージをなぞっていることは明白です。
Ophelia
Shakespeareの四大悲劇の一つ、Hamletの登場人物であるOpheliaを描いたものとしてもっとも有名な、前ラファエル派の画家、John Everett Millais(1829-1896)によるOphelia。 絵画にまったく不案内なわたしでさえ知っているので、おそらく多くの方がご存知だろうと思います。ビデオを見ると、Kylieがシンプルな白いドレスを着ていて、Millaisの絵のOpheliaは凝った茶色っぽいドレスを着ているのでまったく同じというわけではありません。でも草花の生い茂る川で横たわる美女という構図は同じです。

金髪のイメージの強いKylieですが、このビデオのなかでは赤毛です。Nick Caveと二人でTop of the Popsに出たときの映像を見ると赤毛だったので、この時期、彼女は赤く染めていたのでしょう。そのためかこのビデオの彼女はわたしが想像しているElisa Dayのイメージより洗練された大人に見えますが、それでも美しいことには変わりありません。

この歌も"Henry Lee"のようにMurder Balladsのなかの一曲ですが、今回Nick Caveは殺人者役に、デュエットの相手であるKylieは殺人者の手にかかって無残にそのはかない命を終える、無垢な被害者役です。Elisa Dayは恐らく田園地帯に住む、美少女です。しかし、彼女の美しさがある意味で、彼女自身の人間としての権利を剥奪する結果になっている、ということが最初からほのめかされます。彼女は、決して本当の名前では呼ばれない。「野の薔薇」である彼女は、人々にとってElisa Dayという人間ではなく美しく田園地帯に輝く花にしか過ぎないのです。

そこへある日、どこからか男が現れ、一瞬にして彼女の心を奪ってしまいます。彼女はこの男が自分の最初の男だと信じ、誘われるままに人気のない野原に、川縁に行き、短い命を終えることになります。この男こそが、Elisa Dayという名を持った少女を、永遠の美として保存するために本当の「野の薔薇」――ものも言えぬ存在にしてしまうのです。
Where the Wild Roses Grow
Where the Wild Roses Grow

原詞はこちら

野の薔薇の咲くところ
歌詞: Nick Cave
訳: Gil-Martin

みんなわたしのことを「野の薔薇」と呼ぶの
でもわたしの名前はイライザ・デイ
なぜこう呼ばれるのか、わたしにはわからない
だって、わたしの名前はイライザ・デイなのだから

最初に彼女を一眼見た日から、俺には彼女しかいないとわかっていた
彼女は俺の眼を見つめ、微笑んだ
彼女の唇は薔薇の色
川下に生える真っ赤な血のような野薔薇の色

彼はわたしの家のドアを叩き、入ってきた
力強い彼の腕のなかでわたしの震えは収まった
この人がわたしの最初の男になるんだわ
彼は優しくわたしの頬を伝う涙を拭ってくれた

二日目、俺は彼女に花を持っていった
今まで見たどんな女よりも彼女は美しかった
彼女にこう言った。「野の薔薇が咲いているところを知っているか?
甘く、紅く、気ままに咲いているところを?」

二日目、彼は一本の紅い薔薇を持ってやってきた
そしてこう言った。「お前が失うものとその哀しみを俺に与えてくれ」
わたしは頷いて、ベッドに横たわった
そしてこうも言った。「もし薔薇を見せに連れて行ってやると言ったら、来るかい?」

三日目に彼はわたしを川へ連れて行った
薔薇を見せてくれて、わたしたちはキスをした
わたしが最期に聞いたのは、はっきりしない言葉
彼は手に石を握って、わたしの頭上にひざまずいた

最後の日、俺は野の薔薇が咲くところに彼女を連れて行った
そして彼女は川縁に横たわり、風が泥棒のように足取り軽くふきぬけた
そして俺は彼女にこう言ってさよならのキスをした。「すべての美には死が訪れるのだ」と
そして薔薇を一本、彼女にくわえさせてやった

*アーティスト:ニック・ケイブ
 作品:マーダー・バラッズ
    「ホェア・ザ・ワイルド・ローゼズ・グロウ」
| gil-martin | 音楽 | 22:02 | comments(0) | trackbacks(1) |
大自然のなかの愛と性
Brokeback Mountain(『ブロークバック・マウンテン』)見てきました。とうとう。いつも読んでくださっている方は映画見るたび、文句ばっかり言ってるなーと思っていらっしゃると思うので、こう言うのはちょっと気がひけるのですが、この映画、正直言うと、過大評価されていると思いました。というか、最高のラブストーリーとかいう評価が間違っているのでは、と思います。ウェブサイトはこちら。日本版/英語
Brokeback Mountain
実際、アメリカではタブーの話題であるために、あれだけ評価されたという点が否めないと思います。もちろん、今までゲイの物語はあるし、それほど珍しくもなくなっているけれど、ゲイのカウボーイの話ですから。でもゲイのカウボーイが、保守的な周りの抑圧に耐えて愛を貫いた素晴らしいお話かっていうと……? ちょっと疑問。大いに疑問。

どちらかというと、現実的なお話だったと思うのです。愛を貫くために特別なことをしたわけでもなければ、戦いもせず、犠牲もそれほど払ったわけでもない。あの時代に、あの地域で、同性愛的傾向があれば、ああいう暮らしをしたんだろうということが真面目に描かれていたと思います。

わたしが好感を持ったのは、ジャックのほう。ジャックは自分のなかの衝動に正直。Gaydarビンビン。そして、いつも夢見がちで、二人で牧場やろうよ、二人だけで生きていこうよ、と言い続けています。といいながら、彼は逆玉の輿に乗り、生来の調子のよさを生かして、ちゃんとやっていっている。妻とのあいだも冷え、舅の抑圧もありますが、それなりに社会的な役割を果たすことができています。彼の最期は確かに悲惨であり、イニスのような臆病者からすれば、自分の性癖にあまりに正直で、不注意だったせいかもしれないのですが、彼のほうが自分の人生を肯定的に捉えられていたのではないでしょうか?

ジャックを演じたJake Gyllenhaal、わたしはこの映画で見直しました。いつも線の細い印象だった彼。少々オタクっぽいイメージでした。ショービズ一家出身ですが、一番よく知られていたのは、Kirsten Dunstとくっついたり離れたりで長年つきあっていた(いる?)こと。別れてたあいだにも誰かまたかなりハイプロファイルな人とデートしていたのが話題になっていたはず。ということで、本業以外の部分でより有名だった彼も、今までの繊細な現代っ子というイメージを排して、調子のいい、最後のほうではおっさんくさいカウボーイを好演してました。

問題は、イニスの方ですね。わたしがイニスが嫌いだということから考えると、Heath Ledgerはいい仕事をしたんだと思います。イニスは、ただ流されるまま。優柔不断。どうしたいのか、何を求めているのか、今ひとつわかっていない。社会的なプレッシャーだとか、内面化されたホモフォビアだとかは理解します。ところが、だからと言って、それを何とか自分のなかで処理しようという努力が足りない。まず結婚を選んだ。ところが、それが彼の求めているものであろうがなかろうが、自分が選んだものだからそれなりの努力をしてもいいはずなのに、今ひとつそういう努力もしない。悪い父親ではないけれど、良い父親でもない。

夫としては最低。Michelle Williams演じるアルマとのあいだに最初から愛がなかったとは思いません。が、ジャックに対する思いは置いておいても、彼はアルマとの生活に対してまったくヴィジョンもなく、人生を切り開いていく力もない。結局は、自分の知っている場所、仕事、生活のスタイルから脱出しようという勇気がまったくない男なのです。都会に出るのもいやで、それほどお金にならず、しかも秀でた能力を持ち合わせているとも思えないカウボーイの仕事にしがみつき、ただ現状維持ができればいいと思っている様子。そして、避妊も必要のないジャックとのセックスを思い出しているのかどうだか、甲斐性もないくせに「俺の子供を産めない奴とはしない」と言う。もう最低男です。

彼は自分のなかで消化できる以上の快楽と苦痛を知って、混乱に満ちた人生を送っているのでしょう。彼は多分、ジャックには出会わないまま、何も考えない多くを望まない女性と田舎の片隅で生きていければ、一番幸せだったのだろうと思います。彼にはそれだけの能力しかなかったのでしょう。この不器用な男の同性愛的な感情に対する戸惑いを描いていたという点では、この映画はよい映画でした。

本当に本当に最高のラブストーリーだと言うためには、やはり二人は現実を捨てて逃げていなくてはいけなかったと思います。確かに、二人が出会った1963年はまだストーンウォール前で、世の中のゲイの人々に対する理解は低いし、彼らが安全に生きていける場所も存在しなかったかもしれません。でも70年代、80年代と時代は変わり、彼らはニューヨークに、サンフランシスコに、ロスアンジェルスに逃げることができたはず。いや、オースティンに行くだけでも違ったかもしれない。ジャックの言うとおり彼の家族は彼がいなくなっても気にしないだろうし、イニスのほうはそれほど悪くない父親だけれど、娘と一緒に住むことも嫌がるような男であり、養育費だけ稼げればいいはず。ということは、どうせ肉体労働者で特殊技能でお金を稼いでいるわけではないのだから、どこへ行ってどんな仕事でもして、生きていくことができたはずです。

優柔不断のイニスは、気楽な性愛の快楽に満ちたBrokeback Mountainでのひと夏を思い出し続けるだけでしょう。最後の言葉、”Jack, I swear….” What does he swear?  いつも混乱していて、優柔不断の彼らしく、最後までジャックへの思いを言葉にはできません。"I swear I loved you"? "I swear I won't forget you" ? "I swear I won't sleep with anyone else"?

キャッチフレーズに”Love is a force of nature”とありますが、本当は彼らの愛は大自然のなかでの奔放な性だった、くらいなものなのでは?

この映画の一番大きな意義は、アメリカの理想とする男らしさへの攻撃です。アメリカらしい男のもっともたるものである、カウボーイ、その彼らが実は同性愛だなんて、という点ですね。そしてこの映画に関わった人間を見ると、非常に興味深いことが言えます。まず原作はAnnie Proulx。The Shipping Newsの原作でも有名なピューリツァー作家。女性です。そして監督は、台湾人のアン・リーですね。Jake Gillenhaalはアメリカ人だけれども、Heath Ledgerはオーストラリア人。アジア人の男性がアメリカ人に「男らしくない」と見られることが多いことを考えると、アン・リーは復讐しているんじゃないか、という気さえしてきます。Jake Gillenhaalはカウボーイを演じる俳優としては非常に不思議な選択でしたが、このアメリカ人の男らしさの理想を裏切る役を演じる勇気があるアメリカ人俳優がいなかったのかもしれません。ここまでこの映画に大騒ぎすることに、ゲイ・レズビアンの人々に対する受け入れ方が日本に較べて断然、進んでいるアメリカの根深いホモフォビアが見られる気もします。

MichelleandHeathしかし、Michelle WilliamsがHeath Ledgerの子供を妊娠したと最初に聞いたときは驚きましたが、これはこの映画を撮っているときだったんですね。Naomi Wattsとくっついたり離れたりしているHeath LedgerがなぜMichelle Williamsなんかと? と思ったのです。Katie Holmesと同じくDawson’s Creekで世に出て来たMichelle Williamsですが、ティーンエイジャーのあいだだけ綺麗に見えるブロンドという種類の女性だと思います。Dawson’s Creekの最後のほうなんか、見苦しかったですもんね。わたしが思うに、Heath Ledger、この映画を撮っているあいだに自分の男らしさに疑問を持ち始めて、手近で手を打ったんじゃないでしょうか? いや、とっても失礼なこと言ってますが。

……とは言いつつも、Village Peopleを思い出していただければわかるように、カウボーイというのはゲイの人のファンタジーの一つであって、そういう意味ではゲイの方は大いに楽しんでご覧になったかもしれないなと思います。

あ、それとエンドクレジットの最初の曲はカントリーで、立ちあがろうかなと思っているときに流れてきたRufus Wainwrightの"Maker Maker"は、じーんとしました。Rufus、カウボーイは好きかもしれないけど、彼自身はカウボーイにはなりたくないだろうなあ。
| gil-martin | 映画 | 22:18 | comments(7) | trackbacks(0) |
男を(そして人生を)見直すとき
やっぱり今さらなんですが、Butterfly Effect(『バタフライ・エフェクト』)を見ました。公開時に面白いと評判でした。けれども、見なかった理由はおそらく多くのインディ映画好きで見なかった人たちと同じだと思います。Ashton Kutcher。
バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション
バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション
Ashton Kutcherが日本でどのように見られているのかよくわからないのですが、アメリカでの位置づけはティーンエイジャーの女の子たち向けアイドル。今はDemi Mooreと結婚したことで有名になったけれど、その前はThat 70's Showというコメディ番組で名を知られるようになりました。ここが番組のサイト→本家/日本版(去年、Ashtonは番組を降りました)。70年代の少年少女を描くコメディで、Ashtonは顔はいいけど、相当な馬鹿というキャラクター。そして、彼はMTVのPunk'dという有名人にいたずらして喜ぶ番組のホストでもあります(Punk'dのオフィシャルサイト)。なので、彼を好きとは言いきるのは、かなり勇気がいること。いくら彼が真面目なインディ映画を撮ったらしいと聞いても、すぐさま飛びつくのは無理でした。……ところが、ところが、でしたね。やっぱりティーン向けだと言うべきかもしれません。ティーン向けスリラーという位置づけが妥当かな。しかし、意外に面白い。結構楽しい。

一つ、常々、感じている疑問は、このAshton Kutcherを日本では「アシュトン・カッチャー」と表記しているらしいこと。本当は「クッチャー」のほうがずっと近いです。あまりにもつづりと発音が違う場合とか日本人に発音不可能な音の場合、日本語表記がちょっと変なのは納得できるけれど、この場合、つづりをそのまま発音した名前なのに、なんでこんなことになってしまってるんでしょ? 誰のせい? 

Butterfly Effectのポイントは、物事の連鎖です。蝶のはばたき一つが地球の向こう側では嵐になっているかもしれない。……む? これって風が吹けば桶屋が儲かるってこと? ともかく、人生の一つの出来事を変えると、それが様々なことに影響して、その人と周りの人の人生をすっかり変えてしまうよというのがコンセプトです。でも、見ているとどうやら、世界の不幸の総量は変えられないよ、という結論なのかなという気になってきました。誰かが幸せになると他の誰かが不幸になる、誰かが犠牲を払うとその分他の人が幸福になる。なぜかわからないが父親と同じように過去に戻ってやり直しをする能力を持ったAshton Kutcher扮するエヴァン・トレボーンは、その不幸の総量を減らそうと努力するわけです。……永遠に成功しないかと思ったけれど、最後はそれなりに幸せになれるのですが(ややネタバレ)、それでも実は自分の眼に見える範囲内の不幸量を減らしただけかもしれないぞ、とわたしは思いました。

AshtonKutcherにしても、彼が変化を加える前の人生、かなり不幸です。彼自身というよりは、周りが。にも関わらず、彼はそれなりにまっすぐ育ち、州立大学の心理学専攻の学生になります。ちょっと地味目の頭脳派なEvan。あごひげの長髪。これが第一バージョンです。……このAshton、わたし、結構好みです。で、そんな自分にちょっとショックを受けてしまいました。なんか自分がdirty old manならぬ、dirty old woman(エロババア?)になってしまったような気がしたのです。が、実は彼、今28歳なんです。全然、問題ないんです。よかったー。AshtonのイメージがDemi Mooreのboy toy、ってことで、すごく若い、まるでせいぜい法定年齢ぎりぎりか、というイメージだったんですが、結構いってたのね。


ところが、彼が少々人生を修正すると、今度はEvanはfrat boyになってしまいます。Fraternityというのは日本の人にはあまりなじみのないシステムですが、大学のいわゆるグリーククラブというもので、選ばれた人だけが入れる(先輩が選抜する)クラブです。大学の構内にそれぞれクラブごとのお家があり、そこで共同生活するのです。いいところのボンボン、WASPに限られるというのがもともとの選抜規格なのですが、最近はだんだんPCになって、人種・宗教を問わない、セクシュアリティを問わない場合もあるし、黒人学生だけのfraternityもあります。……青春ドラマのDawson’s Creekでは(って見てたことを恥を忍んで告白しますが)、すでにカムアウトしたゲイのJackがfratに受け入れられて有頂天になっていたら、後でこの「おカマ!」と実は馬鹿にされていることに気づいたというエピソードがありましたね。ともかく、frat boysというのは、特権階級に属していることを鼻にかけているヤな奴、というのが普通のイメージ。下級生に拷問まがいのことをしたり、お酒飲んでばかりでパーティ三昧、勉強もしない。

……で、最初のバージョンでは、ゴスパンクのルームメイトと仲良く、ちょっとルーザーだったけど、頭脳明晰でいい奴だったEvanが、fratに入っていやーな奴に様変わり。洋服もRalph LaurenとかTommy Hilfigerとかを着てる感じ。髪も少々短め、ひげもトリムされていました。ここで、わたし、性格だけじゃなく、全然まったく少しも、Ashton Kutcherがかっこいいとは思えないことに気づきました。すごーく限定されたバージョンのAshton Kutcherが好きみたい、わたし。ここでEvanが自分の彼女のsorority house(sororityっていうのは、fraternityの女の子バージョン。みんな細身で金髪ストレート、ちょっと前はBebe、今は多分、Juicy Coutureを着てるイメージ)で、ほぼ全裸で女の子たちのからかうような視線を浴びながらバスルームに向かうところ、これはまさにいつものAshtonらしいヒトコマでした。

この二番目のシナリオにも実は大きな欠陥があり、彼はなんと刑務所に入ることになります。そこでやっぱりやり直し。その次は彼は身体障害者に。そしてその次は精神病院に。ここで、彼は自分が人生を書き換えられるというのは、嘘なんだよと言い聞かせられます。大学だって、fraternityだって、刑務所だって、全部夢。ありがちなパターンですよね。こんなこと、あんなこといろいろあったけど、実は全部、夢だった、とか精神が創り出した妄想だった、とか。ここで思い出したのは、Buffy the Vampire Slayerの後期の傑作エピソード、”Normal Again”(6−17)(こちらがBuffy)。ここでBuffyは精神病院に入っていて、自分がvampire slayerだなんていうのは、全部彼女の精神が創りあげた妄想なんだといわれるんです。ま、ありがちな設定ですが、最後が泣けるんですよねえ。ううっ。……はい、わたしBuffyとAngelのファンです。二つとも終わってしまったときには、これからどうやって生きていこうかと思ってしまいました。いつの日か、全エピソード、DVD揃えます。

というようなことがいろいろありまして、最後には無事、Evanも無事、大きな不幸のないシナリオを選ぶことができ、最後には念願の精神科医になります(そのAshtonもそれほど好みじゃなかった――結論:クリーンカットのAshtonはダメ)。彼が鍵だと思った部分以外で、今までの不幸の皺寄せはどこかに来ているんじゃないかなあとわたしは思いました。悪の根源はEric Stoltzなんですけどね。何はともあれ、自分の男の好みを考え直す機会となりました。普通の幸せを手に入れづらい、男の好みです。わかってはいたけれど。
| gil-martin | 映画 | 22:11 | comments(0) | trackbacks(0) |
スモーキーな声っていえば
"Stop" by Sam Brown

最近、女性アーティストがたくさん出てきて人気を博していますが、女性ボーカルと言えば、この人を忘れてはいけないと思うのです。と言っても、誰も覚えてはいないし、知られてもいないような気さえするのですが。1988年のヒットシングル、Stopで世に名を知らしめ(……たと思う)、その後はさっぱり泣かず飛ばずのシンガー、Sam Brown。自分で曲を書く人なんだけど、言わせてもらえば、その能力が彼女のシンガーとしての能力に追いついていない気がするのが惜しいところ。
Stop!
Stop!
とは言っても、よく調べると彼女はまだちゃんと活躍しているし、よくJools Holland(Squeezeのね)のバンドに参加しているらしいです。彼のアルバムで、彼女の歌声が聴けるみたいですね。例えばこれ。
ジュールズと素晴らしき仲間たち
ジュールズと素晴らしき仲間たち
イギリスでテレビ番組を持っているらしいJools Hollandのこちらのプロジェクトのほうは、ジャズ、R&Bをやるバンドみたいで、Sam Brownを使うのはおそらく大正解。純粋なジャズシンガーとしても彼女は成功したんじゃないか、と思うので。彼女の声は、そう、よく言うんだけど、なんて日本語に訳せばいいのかわからない、スモーキーな歌声。ちょっとハスキーな、でも伸びのある声で、裏声にひっくり返すときは本当に絶妙。

彼女に素晴らしいソングライターがついていれば、おそらく大アーティストになっていたのではないかなと思います。このデビュー作のStopは、どうも曲が80年代っぽくって、大ヒットだったStop以外はつまらないアルバム。それ以外のアルバムも、一応、April Moonっていうのを聴いたけど、パッとしませんでした。母親の死を悼んだ、43Minutesというアルバムは、傑作とされているらしいですが、視聴ができないので買う勇気はちょっとありません。彼女についての情報はここが一番詳しいです。Sam Brownのファンサイト→http://www.onecandle.co.uk/

彼女の最新作のデモが二曲聴けます。曲名をクリックしてください。
こちらは今ひとつかな。伴奏がウクレレだけの曲。I'll Be Here
 
こっちはお奨め。ブルージーです。Show Your Love

多分、彼女、曲を書く能力はともかく、歌詞を書く能力もあまりないみたい。"Show Your Love"も聴いたところでは、歌詞はつまらないし。大ヒット曲も今ひとつな歌詞です。しかも、浮気している男を相手にして、自分から別れる勇気がないからお願い、もう一人の女と別れて、と頼んでいるまったく意気地のない歌です(多分。その逆かもしれないけど)。いずれにせよ、女がすたる。でも、とりあえず訳詞を。

原詞はこちらから

ストップ
歌詞:Sam Brown
訳: Gil-Martin

わたしの持っているものは全部あなたがくれたもの
わたしがあなたに頼りっきりになるって心配はしなかったの?
あげられるだけの愛はあなたにあげた
なのに、あなたが嘘つきだって知った今、わたしはそれでさえ信じられない

あなたの腕に包まれて、わたしは道の向こう側を見る
そして彼女がこのことを知ってるのかしらなんて考えてしまう
あなた、愛とかなんとか言うけど、本当にはわかってない
自分のほかにも女がいることを知ったときにどんな気持ちがするかってことを

やめて、わたしをバラバラに引き裂いてしまう前に
やめて、わたしの心をズタズタにしてしまう前に
お願い、やめて

何度も何度もわたしはあなたの元を去ろうとした
でもあなたの心が二つに分かれているときには簡単じゃないの
だから、ただそうだって諦めることにした
今はもうただあなたに任せるしかない

わたしをズタズタにする前にやめて
わたしの元を去って、わたしの心がバラバラになる前に
お願い、やめて

わたしを愛してるなら、やめて
(あなたは忘れられないはず)
今、悪かったって思うときなのよ
(この日のことを永遠にね)
あなたがわたしから立ち去れるとは思わないわ

わたしをバラバラにする前にやめて
わたしの元から去ってわたしの心を傷つける前にやめて
ああ、お願いやめて

*アーティスト:サム・ブラウン
 作品:ストップ
   「ストップ」





| gil-martin | 音楽 | 21:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
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