Gil-Martinの部屋

Gil-Martinの愛する音楽、感じたことなどなど

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夢心地―ドラッグと音楽1
"Golden Brown" by The Stranglers

先週は、頑張ってラブソングについて書いてみたので、次は何かと考えてみたら……なぜだかわかりませんが、ドラッグについての、またはドラッグへの言及がある曲について書いてみることにしました。でもねえ、ドラッグ関係の歌の歌詞って、みんな曖昧にしがち(わかると放送禁止になったりするから)だし、なおかつハイになっているときの心象風景を描写したりしていると余計、わけわからないことが多いのです。という言い訳はさておき。やっぱりSex, Drug & Rock 'n' Rollですもんねえ。……念のため、言っておきますが、わたしは100%クリーンです。

ドラッグについて、と言えば、この前もアメリカフィギュアスケート界の星、というよりは、(?)のJohnny Weir(ホームページはこちら)がまたまたドラッグに関する発言をしてちょっと問題になったみたいですね。お決まりのように"flamboyant"という形容詞がつく(Johnny Weirdとも言われたりするらしい)彼は、別のスケーターの音楽と自分の使ってる音楽を較べて、「僕のはぁ、みんなぁ、リラックスしてコニャックをすすってえ、煙草を一服って感じだけどぉ、彼のはぁ、ウォッカ1ショットとかぁ、コークをやってるぅ、って感じぃ? きゃはっ」みたいなことを言ったみたいです。オリンピックでも彼は何かやらかしてくれるのでしょうか? 楽しみです。あ、でも立ち振る舞いという点で言えば、オリンピックには残念ながら行けないあの織田何とか君(っていい加減な……)って、日本の外では(内でも?)Johnny Weirとお仲間だと思われてるよねえ?

ま、そういうことで(どういうことで?)、ドラッグ関連の曲を取り上げてみようと思うのですが、初回は1974年結成のご長寿バンド、The Stranglersの"Golden Brown"です。もうタイトルから明らかですね。

グレイテスト・ヒッツ1977-1990
グレイテスト・ヒッツ1977-1990

“Golden Brown”は、何と言っても楽曲がすごくいいです。ハープシコードが入って、八分の十二拍子、変則的に八分の二拍子――今、聴きながら数えた――というトリッキーなリズムの、哀愁のあるワルツっぽい曲です。もともとハモンドオルガンやらキーボードの使い方がうまい曲には弱い、わたし的にはもうど真ん中狙い撃ち、って感じです。もし聴いたことのない人はぜひ、お試しあれ!

The Doorsの影響も受けてるバンドだから……そう! そう、The DoorsのWaiting for the Sunの"Wintertime Love"に似てる! 同じ八分の六拍子だし、キーボードの使い方も似てる! 今、ほんとに今、気づきました。我ながら、納得です。あー、これに気づいただけで、ブログを書いていた価値があるような気さえします。ともあれ、The Stranglersはベスト盤などを聴く限り、音楽的にすごく多彩でジョークもわかる、大人なバンドです。この曲は、歌詞がもうアホアホでも許せる!

訳してみれば、もうそのままですね。彼女は西へ西へと旅をし、男たちを誘惑し続け、彼女と寝る男は安らかに眠ることができる。どうやら、その当時、The Stranglersのギターリスト、Hugh Cornellの彼女だった、地中海地方出身の彼女にもかけてあるらしいですが、この黄金の粉は、ヘロイン――ヘロインはアヘンから精製されますから、ゴールデン・トライアングルのタイとかラオスとかその辺りか、ゴールデン・クレシェントのアフガニスタンとかパキスタンから来ます――つまり東洋の美女なのです。西洋の男たちは東洋の女の黄金色の肌に一瞬の快楽を感じるのです。

(原詞はこちら

ゴールデン・ブラウン
詞 Hugh Cornwell
訳 Gil-Martin

ゴールデン・ブラウン、太陽のような感触
彼女は僕を横たわらせ、一晩中僕の心を撫でる
争う必要なんかない
ゴールデン・ブラウンと居れば、眉一つ上げることもない

毎晩、毎晩、これで最後のような気がする
彼女の船に乗り、マストに結び付けられて遠い地に旅する
彼女は僕の両手を取る
ゴールデン・ブラウンと居れば、眉一つ上げる必要がない

ゴールデン・ブラウン、美しくそそる女
何年も何年も彼女ははるか彼方から西に向かって旅をしている
一日、ここ僕の元で旅の足を休める
ゴールデン・ブラウンと居れば、眉一つ上げることもない

ゴールデン・ブラウンがあれば、眉一つ上げることはない
ゴールデン・ブラウンが居れば、眉一つ上げる必要はない

アーティスト:ザ・ストラングラーズ
作品:グレイテスト・ヒッツ
   「ゴールデン・ブラウン」
| gil-martin | 音楽 | 23:20 | comments(2) | trackbacks(0) |
オヤジの魅力
一所懸命、音楽のことばかり書いてきたのでちょっと休憩して時事ネタを。

複数の女性と同居していたことで世の中を騒がせている自称元占い師の男、渋谷博仁(57)。57歳というから、よっぽど若い女性をうっとりさせるような、いわゆるちょいワル風なおじさまなのかと思いきや、なんだか眼の下の隈がひどい、タコ入道でしたね。隈(クマ)入道というべきか。しかし、今、ちょいワルというより、極悪という顔つきですが、催眠術やら脅しやらとはいえ、相当な「ちょいモテ」ならず「極モテ」技術の持ち主か。

このオヤジのやっていることは、いわゆるpolygamy(一夫多妻婚)ですね。一夫多妻といえば、イスラム教徒を思い浮かべる人も多いと思いますが、一夫多妻といえばかなりのアメリカ人はモルモン教(正式名称:the Church of the Latter Day Saints――日本語は「末日聖徒イエス・キリスト教会」というのですね)を思い浮かべると思います。アホな男が「もし俺がモルモン教徒だったら、あの娘とあの娘とあの娘と結婚するのになあ」とよく言います。もちろん正統派のモルモン教会は、周りからのプレッシャーやユタが州になるためなどという理由で、一夫多妻制を1890年に全面的に禁止しています。

なのに、なぜ今でもアメリカ人一般のイメージがそうか、と言うと、もちろんそのときのイメージが残っているからと、現在でも実践し続けている、異端の原理主義モルモン教徒がいるからです。3、4年前に起こった当時9歳の少女、Elizabeth Smart誘拐事件では、その女の子が1年後、無事に救い出されたことでアメリカ全土は大騒ぎしましたが、彼女自体、ユタ州ソルトレイク・シティの正統派の金持ちモルモン教徒の娘で、誘拐した男はちょっと頭のおかしな、でもやっぱりモルモン教系の一夫多妻制の教義を説く、自称『預言者』でした。

また、その前にはTom Green(といっても、Drew Barrymoreと結婚していたカナダ出身のコメディアンのことではありません)という男が重婚罪と生活保護の詐取(ともしかしたら、幼児虐待も)で捕まっています。この男はネバダとユタ州の州境辺りで、五人の妻と二十五人の(!!!)の子供とともにみすぼらしいトレイラーに住んでいました。彼らは生活保護をまんまとせしめて生活していたのです。

モルモン教系の一夫多妻制度を実践している人々はアメリカ国内で三万人いる、とも言われているようですが、もっとも大規模な一夫多妻制モルモン教徒の共同体は、モルモン教徒の聖地ユタ州とその南に接するアリゾナ州の境のヒルデールとコロラド・シティにある、the Fundamentalist Church of Latter Day Saintsという約一万人からなるセクトのものです。他の社会から離れて孤立した生活をしているので、普通の人との接点はありません。しばらく前に彼らはテキサス西部、エルドラドという街に新しいコロニーを建てたので、今度はテキサスの人を怯えさせているとか。

その共同体での様子は、報道によればこういう感じです。十代の女の子がこのグループの『預言者』と名乗るリーダー、Warren Jeffs(写真等はこちら )、により、すでにちゃんと妻も(何人か)いるオヤジと無理矢理結婚させられる。このグループのなかで地位が高ければ、多分かわいくて若い女の子が次々と融通されると思われます。もちろんその少女も親も抵抗することはできません。抵抗すれば、必死の思いでこの共同体から逃げるしかありません。生まれてからこのかたずっと、この共同体しか知らず、偏った、古風な英語による(わずかな)教育しか受けていないのに。

また、当然オヤジが少女を独占するので、若い男の子たちは余ってしまいます。そういった事情で、彼らは排除されることになります。オヤジと結婚させられることになった少女と付き合っている少年やグループ内での地位の低い家庭の少年、またはこのセクトの教義に少々でも疑問を呈す少年たちは破門され、この共同体を出て「恐ろしい」(けれどもっとまともな)外の世界へ出て行く運命になります。しかし、彼らが順応するのは大変難しいようです。

こういった大規模な一夫多妻制共同体については、連邦、州ともに政府は長い間、手をこまねいていました。共同体が孤立・閉鎖ししていること、宗教の自由といった理由からです。しかし、近年、幼児虐待の事実が眼に余り、州レベル、連邦レベルともに彼らに対する締め付けを強めています。Jeffsがトップに立った頃から内部の安定が崩れてきたことも理由でしょう。現在、Warren Jeffsは幼児虐待等の罪によりFBIから追われています。しかし普段から支持者から十分の一税を取り立て、男性1人につき1ヶ月に1000ドルを払わせていると言いますから、相当リッチな逃亡生活を送っているみたいです。しかも、彼の熱烈な支持者は何をしてでも彼を助けようとしています。一体、このオッサンの言うことの何がいいんだか、とは思いますが、何と言っても『預言者』らしいですから。

Warren Jeffsとこの眼の下クマ入道の比較をするのは、適当ではないでしょう。もちろんJeffsも気に入った女の子は自分のものにしているだろうけど、根本的には気に入ったオヤジに若い子を世話する大ボスであって、クマ入道は自力で若い女性を調達するんですから。Warren Jeffsは父親から権力を受け継ぎ、絶対的な自分を頂点とする王国を最初から持っていました。いや、別にクマ入道が偉いと言ってるわけでは決してなく。でも、クマ入道のところにいた女性たちは少なくとも成人していたらしいですね。

ともかく、このクマ入道の謎はこのオッサンが権力者でもなければ、金持ちでもなさそうなところでしょうか。オッサンがめちゃめちゃ幸せにしてやる、と言っていたらしいけれども、他の女の人とツルッパゲのオッサンと共同生活してどんな幸せがあるのでしょうか? 一方、例えば、いつどんなときに見てもガウンを着ているプレイボーイの創設者であるHugh Hefner(写真等はこちら)が水着しか着ていないような複数の女性と同居しているのには誰も疑問を挟みません。ヘフナーと居れば、プレイボーイのグラビア→セレブ→うまくいけば女優→うまくいかなくとも俳優か金持ちと結婚、というシナリオがあるかもしれないからです。それじゃあ、クマ入道は?やっぱり何かとんでもない脅しとかミラクルな呪文とか催眠術なのか!?

*追記 06/09/06
指名手配中だったWarren Jeffs、8月28日ラスベガスで逮捕されました。インターステートハイウェイを赤い2007年式キャディラック・エスカレード(こういうの:標準で500万から600万円というところみたい)で走行中、車の登記シールが眼に見えるところに貼られていないことからハイウェイパトロールに停められたようです。同乗していたのは、妻の一人、Naomi Jeffsと弟のIsaac Steed Jeffs(ともに32歳)。その当時、持っていたのは携帯電話、ラップトップコンピュータ、5万ドルの現金、かつら。新車のSUVといい、現金といい、古き良きモルモン教原理主義も呆れたものです。そして、8月31日には、ラスベガスの法廷で、ユタ州に引き渡されることに同意したようです。写真つきの記事はこちら
| gil-martin | 時事ネタ | 01:27 | comments(2) | trackbacks(2) |
究極のラブソング5
"Re-Offender" by Travis

だんだん懐メロ傾向が顕著になってきたので、少々(ほんの少々)新しいめに行ってみたいと思います。といっても、全然新しくなくて、発売は2003年のTravisの12 Memoriesから"Re-Offender"です。実を言えば、TravisというバンドはColdplayと並んでRadioheadと似ているバンドだとか何とか言われるので、もうその時点でかなり駄目だったのですが。Coldplayは今でも、というか一層、駄目です。Coldplayのピアノの使い方も嫌いだし、何と言ってもChris Martinの声が嫌いです。あれはおっさん声だと思います。なので、Coldplayの最初のヒット曲を聴くと、「何がぜんぶ黄色なんじゃい!」と妙にムカつきます。単にファルセットを使うだけで、Thom Yorke様と較べるんじゃないっ!

12 Memories
12 Memories
気を取り直してTravisですが、最初の印象にも関わらず、12 Memoriesはいいアルバムです。12 Memoriesの聴きどころは、”Paperclips”に入っている哀しそうな犬の鳴き声でしょうか。散歩に連れてってよ、とか、ええっ、僕を置いて行っちゃうの、というときに犬が出す、あの鳴き声ですね。世にも哀しそうなあの鳴き声。あれを聴くと、コロッとやられてしまいます。

このように犬の鳴き声なんかを使ってグッと人の心をつかんでみたりして、やたら叙情的でメランコリックでやりすぎの感も少々あるTravisですが、"Re-Offender”はただメランコリックではなく、切なく苦しくつらい曲です。この曲は、ラブソングだと言ってはいけないのかもしれません。

どこかでFrancis Healyがこの歌は実際に知っている女性、誰かの母親の男性との関係を歌ったものなんだと言っているのを耳にした記憶があります。彼女は彼女を虐待する男性とともに、長い間、一緒にいて、そこから抜け出すことができないでいる。悪循環に陥って、どうしても抜けられない彼女。嵐が過ぎ去って、彼が彼女に謝り、そして愛してると言われると、つい相手を許してしまう。出口を探せば探すほど見つからない迷路のなかにいる人の話です。

しかし、曲自体では相手の"offense"(犯罪、違反、人の気分を害すること)が身体的なもの、つまり肉体的暴力だとは述べられていないので、どこか歯車が狂った関係すべてに当てはまると言えるのではないかと思います。従って、Francisが歌っていることもあり、訳では一人称を「僕」にしてみました。

"offense"はほんの小さなルール違反かもしれないし、思いやりを欠いた言葉かもしれない。もちろん、浮気かもしれない。何かが違っていると思っていても、つい自分で自分を騙して関係を続けてしまうことは、多くの人に経験あることだと思います。それは多分もう「愛」ではない。日本語にはいい言葉がありますね――それは「」でしょう。多くの人はいつかそこから抜け出します。だが、それに縛られているうちは出口が見えないまま、「」――自分のも相手のも――で自分を言いくるめてしまうのです。


(原詞はこちら

再犯者
詞:Francis Healy
訳: Gil-Martin

外見を取り繕って
見栄を張って他の人たちに合わせ
僕の利己的な心を騙している
機械的に人のするようにしているだけ

でも僕は自分自身を騙しているんだ
自分を騙している
だって、君が僕を愛してるって言うから
でもまた、君は同じことをするんだ、同じことを
君はごめんって言う
そしてまた、君は同じことをする、同じことを

みんな君は元気だと思う
みんな僕が病気だと思う
僕がバラバラになっていくのを見ている
君の呪いにかかって

でも君は自分を騙してるんだ
君は自分を騙している
だって、僕を愛してるって言うから
そして君は同じことをする、同じことを
君はごめんって言う
そしてまた同じことをするんだ、何度も何度も

*アーティスト:トラヴィス
 作品:12メモリーズ
    「リ・オフェンダー」
| gil-martin | 音楽 | 21:22 | comments(4) | trackbacks(2) |
究極のラブソング4
四日目の今日は、Soft Cellの"Tainted Love"です。これはおそらく誰でも耳にしたことがある曲のはず。何だかますます懐メロの領域に入りつつあるのですが、偶然耳にして、やっぱりこれは名曲よっ、と思ったので取り上げます。キャッチーでMarc Almondの艶っぽさが前面に出ていて、ま、campな曲と言ってもいいかもしれないですね。ともかく安っぽい感じがするけれども、でもでも、その安っぽさも含めてよい曲なのです。

Memorabilia: Singles
Memorabilia: Singles

Marc Almondと言えば、一昨年でしたか、オートバイ事故に遭いアーティスト生命が心配されましたが、どうやら無事に活動を再開しているようです。Soft Cell時代のディスコ/テクノに較べて、Marc Almond個人で活動するようになってからは(一度またSoft Cellは再結成していますが)もっと堂々とflamboyant――けばけばしい、華麗な、というような意味ですが、おそらくもっとも日本語の意味合いとして合うのは、オネエ風な、かな?――になったかなという気がします。酒と金と薔薇と裏切り、そして少しの愛、みたいなキャバレー風なcampyな独特な世界を展開していて、聴くたびにクスクス笑えるので楽しいアーティストです。

そういった意味で(どういった意味で?)部屋に飾るためだけにでも欲しいなあとここ数年見ているのが、このアルバム。
Stranger Things
Stranger Things
絶対いつか買います。少しも遠慮したりしないところが素敵っ!。

"Tainted Love"は、数年前、アメリカの昼メロの夏のキャンペーンに使われており、ぴったりの選曲だとつくづく感心しました。アメリカの昼メロは、ン十年続くのが当たり前で(大御所のGeneral Hospitalが始まったのはナント1963年!!!)一朝一夕で追いつけるものではないのですが、その中でもかなり新参者のPassionsの宣伝だったような記憶があります。ともかくアメリカの昼メロも事故、記憶喪失、殺人、裏切り、近親相姦などがてんこ盛りなので、そこに登場する愛はやはりみな「穢れた愛」のはず!

この”Tainted Love”はどこがどう穢れているのかなあと訳しながら考えてみました。どういうことがこの二人のあいだに起こったのかはあんまりよくわかりません。多分、相手は何度も何度も僕を裏切って、そのたびに許しを請うてきたんじゃないでしょうか。

昔、隣に住んでいたゲイカップルのことを思い出しました。痴話ゲンカの激しい人々で、朝の四時くらいにドアの外で一人がお願い、入れて、とか言い、もう一人は、もういい、別れる、僕のことなんか愛してないんでしょ、とか何とか言っていたり。結局、一人がこの"Tainted Love"の「僕」のように荷物をまとめてアパートを出て行き、もう一人もしばらくして出て行きました。あ、やっぱり二人はDepeche Modeが好きみたいでした。

(原詞はこちら

穢れた愛
詞:Ed Cobb
訳: Gil-Martin

ときどき僕は
逃げなくちゃならない気がする
あなたが僕のハートにねじ込んでくる痛みから
僕たちのあいだの愛は
もうどうにもならない気がする
それに僕は希望の光を失ってしまった
夜、眠れないで寝返りを打つばかり

昔、あなたのところへ飛び込んで行ったこともあった
今、僕はあなたから逃げる
あなたがくれたこの穢れた愛から
僕は男の子としてできる限りのものをあなたに与えた
僕の涙を受け取ればいい。これで全てだなんていうことは到底ないけれど
ああ……穢れた愛
穢れた愛

僕は今、あなたから逃げなくちゃならない
逃げなくては
僕から必要なものなんてもうないと思う
僕はあなたを大丈夫にしたりできない
あなたはぎゅっと抱きしめてくれる人が欲しいんだ
それにあなたは愛することは祈ることだと思ってる
おあいにくさま、僕はそんなふうには祈らないんだ

かつて僕はあなたのところへ飛びこんで行った
今、僕はあなたから逃げる
あなたがくれたこの穢れた愛から
僕は男の子としてできる限りのものをあなたにあげた
僕の涙を受け取ればいい。これですべてだなんてことは到底ないけれど
ああ……穢れた愛
穢れた愛

僕に触らないで
そんなふうにじらすやり方はきらいなんだ
僕を傷つけるけどあなたを愛してる
もう荷物をまとめて出て行くよ
穢れた愛
僕に触って
穢れた愛


(エッ! 今見たら、Brangelinaの『Mr. and Mrs. スミス』のサントラにも入ってるのね!驚きました)

*アーティスト:ソフト・セル
 作品:メモラビリア
   「テインテッド・ラブ」


| gil-martin | 音楽 | 22:11 | comments(2) | trackbacks(1) |
究極のラブソング3
三日目は、Joy Divisionの “Love Will Tear Us Apart”です。もうこれが出てきたというのは、なんだかすでにネタ切れという気がしてしまいますが、自分のコレクションを見廻してみたところ、恋愛の始まりのウキウキする曲はもう見当たらなかったのです(……あ、こう書いたら、一瞬、”Wake Me Up Before You Go-Go”――邦題は『ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ』――が頭に浮かびましたが、名曲でもなければ、アホらしくて泣けてくる曲なので、即、却下)。

よっぽど暗い人間なんだなあ、わたし。ま、それが真実ではないとは言い切れないものの、以前にも書いたように、明るい恋愛の歌ってやっぱり馬鹿みたいな歌詞が多くて、訳するにも値しなかったりという事情もあります。恋愛の始まりの気分を表現した曲ということで、Kylie Minogueの”Can’t Get You Out of My Head”も考慮したのですが、やっぱり訳すには値しないか、と。したがって、もう恋愛の始まりということには拘らずに行くことにしました。

ザ・ベスト・オブ・ジョイ・ディヴィジョン
ザ・ベスト・オブ・ジョイ・ディヴィジョン

“Love Will Tear Us Apart”は、New Orderの前身である、伝説的バンドJoy Divisionの代表曲です。ボーカルのIan Curtisが自殺した後、ギター担当だったBernard Sumnerがボーカルを受け継いで、New Orderとなりました。Joy Divisionはポスト・パンクと呼ばれますが、音楽的には基本的にはパンクでありながら、シンセサイザーを導入したことやIan Curtisのより内省的な歌詞によって、パンクと一線を画します。

正直言えば、わたしはもっとポップな、New Wave/Technoの流れにつながるNew Orderのほうが好きです。それに音楽史上における重要性についても、New OrderはおそらくJoy Divisionと肩を並べたか、もう抜き去ったと言えるのではないでしょうか。

しかし、この曲のタイトルは何をも凌駕する力があります。”Love Will Tear Us Apart”、愛は僕たちを引き裂く。インパクトの強さはなんとも言えません。まるで大仰な昼メロのようであり、その皮肉のようでもあり。

しかし、歌詞をよく読むと、それほどドラマチックではないのですよね。Ian Curtisのボーカルはほとんど何を言っているのかわからないので(そういう点でもNew Orderのほうが好きなんです)、いつもサビ部分の"Love, Love will tear us apart again…"のところしか理解してませんでした。今回改めて歌詞を見てみると、倦怠期のカップルか、という感じです。

二人はずるずると一緒に暮らしていて、相手への愛情はまだあるんだけれど(いや、あるような気がするんだけれど)、相手を人間として尊重するわけでもないし、何かがもう噛みあわなくなっている。だから、「愛が僕たちを引き裂く」と言ってはいるんだけれど、日常というモンスターが二人を引き裂いているんじゃないかと思います。それほどパッとしない毎日――仕事もそれほどうまく行かないし、新しい刺激もないし――だと、自分のパートナーもそれほどパッとしないように見えてきて、それほど愛情が湧かなくなってくる、そういうことなんじゃないでしょうか?

それじゃ、なぜIan Curtisは「愛が僕たちを引き裂く」と言っているんでしょうか? よくよく考えてみると、これは「愛の残骸」か「愛という記憶」のことなのかなという気がします。僕たちはつまらない毎日を送っていて、二人はうまく行かなくなっている。この二人はもう破綻しています。間違いなく。でも二人を結び付けている何かはあるんだ、まだそこにあるんだと言っています。でも本当なんでしょうか? それは単なる理性的な愛情かもしれません。もしかしたら、単なる性欲かも。

昨日取り上げた、Bjorkの歌う二人を包む魔法はもうはじけてしまっているんですね、この二人の場合。「愛」という幻想に踊らされて、日常のなかに埋没した二人は、もう存在しない魔法を追いかけ続ける。この「僕」はそのことに薄々気づいているようです。「それは今はもううまく働いていないだけで、もともといいものだ、というのは本当なんだろうか?」 この「それ」というのは二人の愛なのではないか、とわたしは思います。ここまで来た以上、必然のように「愛」という幻想によって引き裂かれるという運命が二人には待っているのです。

(原詞はこちら

ラブ・ウィル・テア・アス・アパート
歌詞 Ian Curtis
訳 Gil-Martin

毎日の仕事がつらく思えてきて
野心も抱けなくなり
どうしようもなく怒りが高まってくる
でも、感情は低空飛行のまま
僕たちはやり方を変えてみる
別の方向へ進んでみる
愛が、愛が僕たちを引き裂くんだ

ベッドルームはなんでこんなに寒いんだろう?
君は自分の側に寝返りを打つ
僕のタイミングがずれているんだろうか?
お互いに対する尊敬の念がなくなってしまった
だが、まだ惹きつけるものはある
今までもずっとそこにあった
愛が、愛がまた僕たちを引き裂く

君は眠りながら叫ぶのか?
僕の至らないところがすべて露になる
絶望感が僕を覆うと
口の中に苦い味が広がる
ただそれはもううまく働いていないというだけで、
それ以外は本当にそんなにいいことなんだろうか?
だが、愛が、愛がまた僕たちを引き裂くんだ

*アーティスト:ジョイ・ディヴィジョン
 作品:ザ・ベスト・オブ・ジョイ・ディヴィジョン
    「ラブ・ウィル・テア・アス・アパート」

| gil-martin | 音楽 | 23:19 | comments(0) | trackbacks(0) |
究極のラブソング2
二日目はBjorkの最初のアルバム、Debutからの”Come to Me”です。おそらくBjorkはこれを越えるものは作れないのではないか、というくらい素晴らしいアルバムだったと思います。

Bjorkのラブソングの特徴と言えば、自己完結ということでしょうか。彼女のラブソングを聴いていると、伸びやかな声に体中で叫びたいと思っている、好きだという気持ちが伝わってきてとても気持ちいいのですが、誰を?とか、その相手は一体実在の人なの?とか、あなた自身は人間なの? という疑問が湧いてきて、結局、彼女が好きなのは彼女自身だけじゃないか、という気もするのも事実。レッド・カーペット史上最悪のfashion faux pasとして永遠に記憶されそうな、スワンドレス――2001年アカデミー賞だったかな?――も、アワードショーにふさわしいかどうか、自分がきれいに見えるかどうかはともかく、自分が着たいから、好きだから着ている気がしましたよね(調べてみたら、そのドレスは去年の九月にチャリティオークションに出されていたみたいですね)。他の人々が最悪だ、何だあれは、と騒いでも、Bjorkは違う次元に存在しているから言っても無駄だという気がしました。何はともあれ、相手の見えないラブソングを書くのは、Bjorkの特徴かもしれません。しかし、またまた言うなら、究極の、最高の恋愛は、相手が実際に存在しないときにしかできないのかもしれません。

そういう意味では、どちらかと言えば”Come to Me”は反対側にいる相手が見えそうな曲ではあると思います。一見、この曲は、マザコン傾向の高い男性(日本人の、とつけるべきかどうかは?)には、もう最高の曲のようです。「大丈夫よ、わたしのところに来て、守ってあげるから」と言い、自己表現の苦手な男性(やはり、日本人の、とつけるべきか)にはありがたいことに「説明なんかしなくていいの、わかっているから」と言ってくれるのです。ということを考えれば、酸いも甘いも噛み分けた懐の深い女性が、疲れ切った弱々しい男性を包みこみ、愛してあげようと言っている、かなり落ち着いた段階の関係についての歌のようにも聞こえなくはありません。中島みゆきにも『わたしの子供になりなさい』という歌がありましたね。あまりの直球ぶりにわたしは衝撃を受けた記憶があります。そんなこと言うと、返ってモテないんじゃなかろうか(……とは言っても、中島みゆきお姉さまほどの人生経験はないのでそう言い切る自信もないのですが)。

Debut + Bonus Track
Debut + Bonus Track

しかし、このBjorkの曲はむしろ恋愛の始まりの曲だなと言う気がします。まず、Bjorkが心地よさそうに”I adore you”と言うとき、ああ、彼女は本当に全身で大好き、と思っているんだなという気がします。この部分の伸びやかな声を聞くと、恋愛の始まりのときのことを思い出しません? そして、決定的なのは、口を開けば、”it would burst the bubble”の部分。bubbleとは泡のことですが、この表現はまさにその泡がはじけてがっかりする感じ、夢のような気分が突然、崩れ、現実が見えてしまうことです。いろいろ口にすると、夢が崩れてしまう気分というのは明らかに恋愛の最初の熱に浮かされたような気分のときだけでしょう。そして、ちょっと不気味というか――大人というか――なのは、「わたし」はそのことは重々承知なのですね。

しかし、もっと不気味なのは、この夢のような気分を保つために、ともかく「好きだ」とかわざわざ言わせないで、と言っている割に、相手に大きな犠牲を払わせようとしていることです。「あなたのビルはもう火事になっている」、「ジャンプして、あなたを押しとどめていることをすべて捨て去って、わたしの腕のなかに飛び込んできて」という彼女は、相手の男を包みこんであげる包容力のある女性のようでありながら、安定した生活を捨ててわたしのところへ来てちょうだい、と言っている不倫相手の女性のようにも聞こえる……。そこまで言うと、あまりにもゲンナリなので、もうちょっと控えめにしましょう。とはいいながら、百歩譲っても、すべてを受け入れてあげるから、あなたは何も持たないでわたしのものになって、ということを言っているんですね。完全に相手を受け入れる完璧な愛には、完全に他を排除する厳しさもあるということでしょうか。それを考えると、この曲にもやはり結局は、「わたし」一人しか本当は存在しないのではないか、という気がするのです。なぜなら、「わたし」がとても好きな彼は、もうその他のしがらみを取り去った「わたし」だけのもの、彼は「わたし」のなかでしか存在しないものとならなくてはならないからです。言葉も必要にならない「わたし」と彼の空間には、実はわたししかいないのです。とは言うものの、自己満足/自己完結でもとっても幸せな、人間離れした、何者かわからない生物、Bjorkのユーフォリアを間違いなく経験できる曲です。そうですね、この言葉、ユーフォリア(euphoria: 多幸感、強烈な幸福感)は、Bjorkを言い表すのにぴったりの言葉かもしれません。


(原詞はこちら

カム・トゥー・ミー
作詞:Bjork
訳:Gil-Martin

こっちに来て
面倒を見てあげる
守ってあげる
落ち着いて
疲れてるのよ
こっちに来て横になれば
説明なんかしなくていいの
わたしにはわかるから

わかってるでしょ
あなたのことが大好きなの
わかってるでしょ
本当に大好きなの
だから言わせないで
口に出せばわたしたちのこの世界が壊れる
魔法が解けてしまう

ジャンプするのよ
あなたのビルは火事になってる
わたしが受けとめてあげる
わたしが受けとめてあげる
あなたを押しとどめているものを全部捨て去って
そうしたらわたしが看病してあげる
看病してあげるわ

こっちに来て
面倒を見てあげるから
説明なんかしなくていいの
わたしにはわかっているから


*アーティスト:ビョーク
作品:デビュー
   「カム・トゥー・ミー」
| gil-martin | 音楽 | 22:49 | comments(0) | trackbacks(1) |
究極のラブソング1
"Why Can't I Be You?" by The Cure

ふと思いついて、ラブソングについて考えてみることにしました。ポップやロックというジャンル、または歌詞のある音楽全般において、もっともよくあるテーマは恋愛ですよね。アホか、というような薄っぺらい歌から(ほとんどの恋愛の話は他人から見たら、アホか、という話ですから)、うわー、死んじゃいそう、というくらいつらい歌(演歌とかCountryとか?)までいろいろあると思います。最初はまず恋愛の初期の気持ちを歌った曲を。できれば、今週ずっと(できれば、です)。

The Cureのお得意とするのは、能天気でそれでも不思議なラブソングです。改めて聴いてみると、The Cureと言えばGoth (ゴス)の王様なのにラブソングがすごく多いんですね。特にシングルヒット曲はほとんどラブソングかな? ある意味では、わたしが常日頃思っていた、The Cureがbipolar (双極性障害)的な、躁鬱的なバンドだというイメージをそれなりに反映した事実かもしれません。アルバムにはどよーん、という曲もたっぷりありますからね。特にBloodflowerなんかには。

恋愛の始まりと言えばThe Cureには"Friday I'm in Love"(ロシア民謡の『一週間』みたいに月曜日はこうで、火曜日はこうで、と言っているうちに、金曜日には君に恋してしまうという歌)がありますが、今日取り上げようと思うのは"Why Can't I Be You?"です。Kiss Me, Kiss me, Kiss Meというアルバムが初出でしたが、その後リミックスを含めるとさまざまなベスト盤に入っています。

Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me
Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me

この曲は、The CureもしくはRobert Smithの特徴である、クリーシェをしつこく使いながら、どこか微妙にずれていて、いつの間にか不思議なイメージ世界に誘い込んでしまうタイプの曲です。この「僕」は、彼女のことが大好きで、うれしくてしょうがない。彼自身、頭の先から爪の先まで恋をしている興奮でいっぱいです。でも、彼女はなぜか彼にとって"right as rain"、「雨のようにしっくり来る感じ」です。ま、それはともかく、「君」は我慢できないくらい素敵で、抱きしめたくてキスしたくてたまらないんだけど、その気持ちが辿り着く先が、「なんで僕は君になれないんだろう?」

ここまで来ると、ふと、ごく当たり前のクリーシェ、「君はすごく素敵で食べちゃいたい」、っていうのが、え、もしかして?という疑問を起こさせます。いや、そこまでは行かなくても、「僕」は「君」が大好きなあまり、「僕」という実体を消して「君」になりたいと思うくらいだ、というのは何だか違和感ある感覚です。ジェンダーの壁を乗り越えて、「僕」は素敵な女の子である「君」になりたいのです(うーん、これが男性、女性ともにゲイの人だったら? 相手になりたいというのは普通にあり得る感情でしょうか?)。

しかし、翻って考えれば、いつの時代でも好きな人との一体感幻想は恋愛における究極の形です。「あなたとわたしは一心同体」、という幻想。例えば、”I am Heathcliff!” と叫ぶ、第一世代キャサリン(cf. Wuthering Heights)なんかそうですね。でも、ここでおそらく男性である「僕」は「君」に同化しきれないことはわかっている。一体感幻想はない。「僕」は決して「君」と一体になれないことはわかっているのですね。それじゃ、彼の盛り上がった恋愛感情にはどうやって決着をつけたらいいんでしょうね? この「僕」は「君」ではないから、大好きなのです。でも、ほんとに「僕」は「君」になりたい、と思ったら……? 踊り出したくなる、無邪気で幸せな気分になる曲ですが、何かそのハイパーテンションのなかに不吉なものを感じてしまうのは、Robert Smithの外見のせいだけではないでしょう。

(原詞はこちら

何で僕は君になれないの?
詞Robert Smith
訳 Gil-Martin

君はとってもゴージャスで
僕は何をしたっていい気分になる
君の足の先から頭の先までキスしたい
君はほんとに完璧
君は雨みたいにしっくり来る感じ
君は僕に欲望があったことを思い出させてくれる

君がすることは何だってたまらない
君がすることは何だってキスしたくなる
なんで僕は君になれないんだろう?

息が切れるまでぐるぐる走り回りたい
君を食べちゃいたい
それとも君の息ができなくなるまで抱きしめたい
君はとっても素敵
本当の人間だとは思えないくらい
君は僕の欲望を掻き立てる

君がすることは何でも本当に繊細
君がすることは何でもまさに天使のよう
何で僕は君になれないんだろう?

君が向きを変えれば僕も振り返る
君は世の中をすべてひっくり返してしまう
僕は君に首ったけで、グッと来ていて、虜になっていて、参っている
僕は糊みたいにベッタリだ
君は僕の欲望を掻き立てる

君がすることは何でもほんとに夢みたいだ
君がすることは何でもとってもおいしそう
何で僕は君になれないんだろう?
何で僕は君になれないんだろう?
何で僕は君になれないんだろう?

君はほんとにエレガント



*アーティスト:ザ・キュア
 作品:キス・ミー、キス・ミー、キス・ミー
    「ホワイ・キャント・アイ・ビー・ユー?」


| gil-martin | 音楽 | 21:50 | comments(0) | trackbacks(1) |
世の中の男を二つに分けると―セクシーな男たち―
世の中の男を二つに分けると、まず頭脳派と肉体派に分けられるでしょう。Nerds (日本だったらアキバ系)とjocks (体育会系)ですね。この二つをイメージで表すなら、毛玉のついたセーター穴の開いたシャツ(意味不明)。

世の中では普通、住み分けがされていて、これらの人々が同じ場所で顔をあわせることは少ないんじゃないでしょうか。でも、音楽という世界には、この二種類の人たちが共存しているんだ、と今日ふと気づきました。そう思ったのは、orangeflowerさんのブログで紹介されている、pandora.comという自分の嗜好に合わせたラジオ局を作ることができるウェブサイトを使っていたときです。Radioheadの"Paranoid Android"と同じような傾向の曲を流すラジオ局というのを設定してみたら、いつのまにかAudioslaveの"Like a Stone"が流れてきました。

Audioslave
Audioslave
Audioslave

わたしは両方とも好きなので、この選曲にはまったく問題ありません。おまけに偶然にも二つのバンド名は似通っています、RadioheadとAudioslave。が、が!二つのバンドのイメージは大きく違います。正反対と言えるかもしれません。このウェブサイトはこの二曲が楽曲的に似た性質を持つと判断したんだけど、RadioheadのフロントマンThom YorkeとAudioslaveのフロントマンChris Cornellの間は大西洋ほど広い。いや、二人とも極め付きのセクシーな声を持っていると思うのですが、先ほどの比喩を使えばThom Yorkeがセーターを着ていて、Chris CornellはTシャツを着ている(いや、よく着ているのはランニングですね)という感じ。

Oxfordで知りあった仲間とバンドを形成したThom Yorkeには、内省的でmellowなギターポップだった初期を経て、実験的で先進的な音作りをし始めた3作目以降、特にcerebral(知的、思索的)という形容詞がぴったりだと思います。一方、alternative/grungeの流れで出てきたもののへヴィメタ傾向の強いSoundgardenのフロントマンだったChris Cornellがヘヴィメタ・ヒップホップグループのRage Against the Machine(このバンド名を言うたびに、アメリカのレイトナイトショーのホスト、David Lettermanが大げさなリアクションを取っていたのを思い出しますが、まさに!!! わたしはこの名前を聞くたびに、ラッダイト運動、という言葉が頭に浮かびます)のメンバーたちとともに組んだAudioslaveはギターソロの多い、かなりハードな音を出すバンドです。わたしの普段聴く音楽からは少々ずれたところにありますが、細かいことはさておいて、正直、好きです。それなりにキャッチーで口ずさめるけれども、押さえどころは押さえていて馬鹿っぽくない。

ともかく、知能指数の高そうなOxfordのThom Yorkeと、Seattleの(けれども、わたしのイメージではLAで車のメカニックとかしてそうな)Chris Cornellは、一生普通にしていたら出会うことのない人たちだろうと思うのです。それがインターネットラジオで、同じ種類の音楽を作る人たちとして認識される。アート系nerdと、jock……というよりはそのなれの果ての出会いですね。ちなみに、Chrisの着ている白いランニングはwifebeaterとも呼ばれます―いや、それは何よりもEminemのトレードマークとしてふさわしい。

Audioslaveは基本的に音としてはRage Against the Machineなんだろうと思いますが、Rage Against the Machineはあまり好きではなかったことを思うと、決め手はChris Cornellだと思います。何と言っても彼は声が素敵。うっとり。ランニングから出た腕も美しく筋肉がついています。結局、そこか、と

セクシーなChris Cornellの写真はこちらへ。
http://www.audioslaved.com/gallery-album_album08.html

いい加減、もううんざりするくらい巷に溢れるタフな男を演出するための小道具、goatee(あごひげ)も彼なら許せます。"Like a Stone"のビデオはChris Cornellの魅力爆発……Audioslaveが好きなのはまずビデオを見たからか???という疑問発生。

もちろんThom Yorkeもcerebralな意味ですごくセクシーなのです(彼のcerebralなセクシーさを理解してもらうためには、写真ではなくオフィシャルウェブサイトへのリンクを。
http://www.radiohead.com/

結局、二人の間の大西洋ほど(Chris Cornellは西海岸にいると思うので、まずアメリカ大陸を横断しなくてはなりませんが)広いギャップもセクシーさという北極海という近道を渡って埋められてしまうのですね。音楽ではオタクも体育会系どちらにも平等にチャンスがある。どちらもセクシーだと思います。わたしはそのあたり、非常に平等です。Thom YorkeやChris Cornellではレベルが高すぎるから、当然でしょ、という突っ込みはご容赦を。

でも、やっぱりどんなお気に入りだと言っても毛玉のついたセーターも穴の開いたTシャツも着ないでもらいたいのです(わたしの身の周りの男たちへの個人的なお願いです。そう、あなたとあなた!)。

*アーティスト:オーディオスレイヴ
作品:オーディオスレイヴ
(アーティスト:レディオヘッド)
| gil-martin | 音楽 | 21:44 | comments(6) | trackbacks(0) |
デジャヴュ体験―これってパクリ?―
今日は短めに。

昨日、見るともなしに『神はサイコロを振らない』というドラマを見てしまいました。今ひとつ心を惹かれないのでこの先、見ないと思いますが、思ったことが一つ。これって、あっ、これって……パクリ?

思い出したのが、一昨年アメリカのケーブルチャンネルUSAで始まったThe 4400というドラマ。エイリアンに誘拐されたらしい人たちが4400人(も!)、あるとき突然帰ってくるというお話です。『神は…』と違って、それぞれの人々は違った時代の違った場所から誘拐されるのですが、同じときに同じ場所に一挙に戻ってくるのです。スピルバーグのテレビシリーズのTakenと対をなす感じでした。ともかく、帰還者たちはそのままの年齢なのに、地球の年月の流れに従って死んでしまった家族や再婚してしまった夫などにどう対処していくのか、というのがお話の見所です。それをもっとややこしくするのが、その帰還者たちがどうやらそれぞれ違った超能力を身につけていること。このドラマ、まだ続いているようです。

もちろん飛行機に乗って別の世界に突入する、タイムスリップするなどというお話はいやになるくらいあって(広く言えば『猿の惑星』もそうだし、同じ年に始まってもっともっと大ヒットしたドラマLostは言うまでもなく)、新しいアイデアでもなんでもないのですが、戻ってきた人々とそれを迎える人たちの交流に焦点を置いたという点で、『神は…』はThe 4400に近いのではないでしょうか。帰還者たちをまず隔離しなきゃいけないとか、せっかく帰ってきたのに家族に心を閉ざしているとか、帰還者たちのあいだで恋が芽生えるとか、そういうところがThe 4400を思わせます。もちろんこういう設定のお話は他にもたくさんあると思うのですが、わたしには思いつきません。

本家(と言ってしまいますが)のThe 4400もかなりしょぼいのですが、(わたしにとっての)見所は主役の一人であるJacqueline McKenzieでした。Homeland Securityの人かなんかで、帰還者担当の役です。McKenzieはStellan Skarsgaard(とPaul Bettany)が出ているのに駄作だった、Kiss Kiss (Bang Bang)という映画でSkarsgaardの恋人役だった女優さんです。重箱の隅をつつくようなポイントですが。でもこういうのって気づくと嬉しくありませんか? 

ともかくThe 4400の続きも気にならなければ、『神の・・・』の続きも気にならないのでした。
| gil-martin | つれづれ | 20:47 | comments(0) | trackbacks(0) |
「万引き犯たちよ、団結せよ」と呼びかけるスーパーの不条理
Louder Than Bombs
Louder Than Bombs

スーパーでお買い物していて、庶民的な空間にはあまりそぐわない音楽が流れてくることが時々あります。わたしのよく聴くようなalternative系と呼ばれるものは、高級な音楽では決してないけれど(むしろ逆ですが)やっぱり中年以上の主婦が夕食の材料を求めて彷徨う(お洒落とは程遠いところに住んでいるもので……)夕方のスーパーで耳にするとどうも違和感がありますよね。そういう時、無意識に口ずさんでしまいませんか? 公共の場所でイヤフォンを通してMP3プレイヤーから流れる曲に合わせて歌うのは少々痛い、というのはわかるけれども、スーパーだとあまりの不意打ちにガードが下がってしまっているというか。つい夕方のスーパーで流れてきたThe Smithsの"Shoplifters of the World Unite"に合わせてコーラス部分を口ずさんでしまい、あまりの不条理さに一人で不気味に受けてしまった今日のわたしです。スーパーで「万引き犯たちよ、団結せよ」とはなにごとぞ

というわけで、2番目の音楽評のお題は、スーパーのブラックジョークにやられてThe Smithsです。The Smithsの作品群、実はわたしまったく把握していません。あまりのEP、コンピレーション、ベスト盤の多さに困惑しております。おそらく同時代のファンなら一枚ずつ買っていて把握済みなのかもしれませんが、わたしがThe Smithsと出会ったのはちょうど解散の前で、コアなファンがThe Smithsの解散を惜しんでこの世の終わりのように哀しんでいるのに怖気づき、なんとなく乗り遅れてしまったのでした。そうは言っても、やはりThe Smithsを避けて通ることはできません。それなりにベスト盤などを買って、少しずつ穴を埋めてきたわけです。

The Smithsのファン、またはファンとは呼べなくともそれなりに好きな人なら、Morrissey派とJohnny Marr派に分かれるのではないかと思います。わたしは長くMorrissey派だと思っていたのですが、Johnny Marrが2、3年前に初めてフロントでやったアルバムを聴いて、いや、Marrも捨てがたいぞ、と思っているところなのですが、それはまた今度。

ともかくThe Smithsのアルバムはあまりにたくさんあってよくわからないので(かつわたしは文が長くなる傾向にあるので)、今日は"Shoplifters of the World Unite"だけに話を絞ろうと思います。かなりヒットした曲なので、いくつもあるThe Smithsのベストのほとんどに入っていますね。この曲、今日、スーパーで口ずさむまであまりそれほど深く考えたことのない曲でした。「万引き犯たちよ、団結せよ、そして乗っ取ってしまえ」とは言っているけれど、よく歌詞を聴くと万引きする人々の歌ではないような……。正直言って、よく聴いてみてもわかりません。どうやら、Morrisseyのゲイの人々へに対する応援歌だという解釈もあるらしいですね。

それでも、他の人や社会に受け入れられないと自分の殻にこもり怯える人を歌ったMorrisseyお得意の内省的な歌の一つであることには間違いなさそうです。その上で、彼は"unite and take over"と呼びかけます。そうやって恐ろしい外部に出て行こうとすると、すぐ飽きてしまったりもするけれども。万引き犯であることは、「わたしの唯一の弱点である罪」の比喩的表現なのでしょうね。Morrisseyが意図しているその罪がゲイであることなのか、何なのかはさておいて。

実際、セクシュアリティが非常に曖昧なMorrissey、今でもわたしは彼がゲイなのか何なのかわかりません。内向的で、他人とうまくやっていけなくて、駄目な自分を表現し続けるMorrissey。内向的な部分を外部に向かって表現し続けるのです。しかし、社会や他人を批判することはしない。そこがThe Smithsの魅力だと思います。自己陶酔的といえるまでに自己の脆く危うい存在の痛みを歌いながら、さわやかにギターを聞かせてしまうThe Smiths、永遠のカルトバンドの一つだというのはともかく間違いないでしょう。

*アーティスト:ザ・スミス
 作品:ラウダー・ザン・ボムス
    「ショップリフター・オブ・ザ・ワールド・ユナイト」
| gil-martin | 音楽 | 22:29 | comments(0) | trackbacks(0) |
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