Gil-Martinの部屋

Gil-Martinの愛する音楽、感じたことなどなど

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想像力の海に呑み込まれる
今日はとてもお奨めの映画について書きたいと思います。この前の『ナイロビの蜂』に較べて、予備知識はまったくなしで行ったので、思いもかけない内容だったことに驚いた部分も含め、驚きと喜びと哀しみに満ちた映画でした。Terry Gilliam(テリー・ギリアム)監督のTideland (『ローズ・イン・タイドランド』)。
Tideland
このポスターを見ると、主人公の女の子がとてもかわいらしくて、ファンタジーというジャンル分けからTerry Gilliamがかわいいファンタジーを撮ったのかな、という漠然としたイメージを持っていたのですが、「グロい」という評価もされていたので、うーむ、あのかわいらしい女の子がどう「グロい」ファンタジーのなかに出てくるのか想像がつかないぞと思いながら映画館に行きました。……「グロい」ファンタジーといえば、Jean-Pierre Jeunet(ジャン-ピエール・ジュネ)という連想をしてしまいますが、彼の場合は薄暗い、灰色のイメージですよね。とはいえ、Amelie(『アメリ』)はグロさを激減させて大ヒットしましたが。

Terry Gilliamは非常に熱心な支持者のいる監督ですが、どうもわたしにはピンとくる監督ではありませんでした。だいたいMonty Pythonシリーズを見ていると疲れてしまうのです、わたし(Monty Pythonがあまり好きじゃないって、ちょっと言いづらいことの一つかも)。Monty Pythonメンバーの唯一のアメリカ人として、多くの映画を作ってきた彼ですが、彼はとっても面白いはずだけど、わたしにとっては何となく疲れる監督。わたしの認識はこれくらいなので恐らくファンの方には納得できないことを言いそう。とは言え、今回は正直、大絶賛、です。

先ほども言ったように、まったく予備知識なしで映画館に行って見はじめたのですが、冒頭、少女がAlice in Wonderland(『不思議の国のアリス』)を語り始めたことには驚かなかったものの(いかにも、ですし)、彼女が南部訛りだったのには驚愕しました。……そんなところで驚愕しても仕方ないのですが。この女の子自身が南部出身となのかとも思いましたが、カナダ出身ですね(imdbを見ると、Stargate SG-Iなんかにもゲスト出演してます。わたしにはどうしても面白さがわからない、額になんか印のある人の出てくるSF)。

彼女にはショービズ・ヒッピー崩れの両親がいます。LAでの生活は、最悪ですが笑えるシーンが満載です。そして、最初気づかなかったのが父親役がJeff Bridgesだということ。ロッカー崩れの年老いた父親を好演です。Jeff Bridges、いい役者ですね。アメリカ人のダメなオッサンをやらせたら、もうこの人に適う人はないかも。何となくBaldwin兄弟とBridges兄弟・一家のイメージが被ってしまって、Alec Baldwinと較べると印象の薄いBridges家の代表的俳優という薄ぼんやりしたイメージだったのですが。でも The Door in the Floor(『ドア・イン・ザ・フロア』)では、奥様・お嬢様キラーのオッサン役で、愛しようがないキャラクターなのですが、彼がなぜか、なぜか許せるキャラクターに演じていました。今回もそう。ダメさ加減がまったく別のベクトルなのですが、この年老いたパパも人間としては最低最悪なのに、否定しきれないキャラクターでした。

それはもちろん、愛らしいJeliza-Roseの彼への愛情所以でもあります。彼女はダメ人間の両親をせっせと世話し、孤独や哀しみに陥ることなく、自分の友達である頭だけになったバービー人形たちを道連れに、未知と不思議に満ちた世界を探検し続けます。……以前にも書いたとおり、わたしは人形が小さい頃から怖かったのですが、この映画では怖いのが当たり前のような扱いだったので、素直に受け入れられました。物語の大半が展開するのが、Jeff Bridges演じる父親Noahの母親が住んでいた、南部の草原です。崩れかけた家、草原に捨てて置かれた客車、不気味な魔女のような女性、知能に問題のある男という南部のステレオタイプ、退廃のイメージをなぞっていきます。だから、南部訛りだったのね! と一応、納得するのですが、でも考えてみれば、父親には強い訛りがないし、Jeliza-Roseが生まれ育ったのはLAのはずなのに、なぜに? ……という疑問は放っておきましょう。

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最初はJeliza-Roseの一人遊びはかわいらしく楽しく罪のないものなので、見ているほうも微笑ましく見守っていられます。とは言え、冒頭近くのシーンで彼女が父親のためにヘロインを溶かしているのを見たときには、かなりショックでしたが、そのショックを乗り越えると何があろうがある程度は笑って受け入れられました。しかし、Jeliza-Roseが天涯孤独の身になり、死んだ父親の上に丸くなって眠るのを見たりするうちに、不思議の国に住むJeliza-Roseの世界が真に危機に瀕していることに気づきます。もしかしたら、代わりの母親になってくれるのかも、と思わせた奇想天外な魔女のような女性Dellも……やはり奇想天外な人間だということがわかると、だんだん追い詰められていることがわかってきます。何よりも彼女の置かれた立場の危うさが明確になっていくのは、癲癇の治療のための手術で知能に明らかに障害を来たしたDickens(Dellの弟)と、Jeliza-Roseとの危うい友情・愛情の交換の部分です。Jeliza-Roseは無邪気に素敵なボーイフレンド、自分を愛してくれる誰かを追い求めているだけです。Dickensにも悪意はまったくなく、唯一自分を慕ってくれるかわいらしい女の子と楽しく遊びたいだけです。でも、ここに大きな落とし穴が待ち受けているのは、火を見るより明らかです。

そしてクライマックスは突然、やってきます。今まで不思議で奇妙な映像のなかに埋もれていた彼女の本当の悲劇をすべて視覚的・雰囲気的に象徴している列車事故。Jeliza-Roseはその決定的な悲劇のなかで自分を庇護してくれる人を求め、自分の空腹を満たしてくれる人を求めて彷徨います。そしてそこに一人、普通の中年女性がやっと、やっと初めて大人として、ほんの小さな子供であるJeliza-Roseを保護してあげようと手を差し伸べるのです。この場面では特に感動をそそって泣かせるキューとなるせりふも大きな出来事もないのですが、なんだかここでわたしはぼろぼろ泣いてしまいました。あんな満員の劇場でなければ、もっと大泣きしてしまいそうでした。

月並みなことは言いたくないのですが、いくら奇妙で愛すべき人に囲まれており、なおかつ彼女の想像力に助けられて、毎日の生活が不思議の国を旅するようなものであったとはいえ、実際、Jeliza-Roseの生活はあの年齢の女の子には、虐待の連続であったと言うべきです。誰も彼女を子供として慈しみ、育て、保護してはやらなかったのです。列車事故で自分も恐らく大切なものをなくした中年女性だけが、Jeliza-Roseをその年齢の女の子として、素直なごく普通の大人の視線で、初めて彼女を見たのです。ということに気づいたとき、本当につらくなってしまいました。

……という楽しい魔術的な見せかけの下に隠されたつらい思いを経験してしまう映画なのですが、もう一度見たいと思わせる映画でした。今年、そこまで思った映画はないので、今までのところわたしにとっては第一位でしょうね。少々ネタばれしてしまいましたが、まだご覧になっていない方にはぜひ見ていただきたい映画です。上映が終わっていればDVDででも。もしかしたら、わたしももう一度映画館に足を運ぶかもしれません。でも、東京では二つの劇場でしかやってないのですよね。もう少し多くの劇場で上映してくれるといいなと思います。

Jeliza-Rose最後に一つ、題名について。タイトルは原題がTidelandです。映画も原作の小説のタイトルもTidelandです。日本の映画タイトルが『ローズ・イン・タイドランド』。それほど大きな改変ではないのですが、ちょっと不満です。Jeliza-Roseというのが主人公の名前なのですから。ハイフンのついた名前だったら、最初の名前だけで呼ぶこともあるとは思いますが(ということはJeliza)、この子の場合、Jeliza-Roseと自分でも自分のことを呼び続けているし、南部訛りでaiの発音を「アー」という感じで伸ばした「ジェラー(ィ)ザ・ローズ」というのが彼女の名前だと思うのです。だから、ローズっていうと、彼女じゃないじゃん、とちょっと不満なのでした。

| gil-martin | 映画 | 01:04 | comments(2) | trackbacks(5) |
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はじめまして
わたしも非常に気に入りました。この映画。
DVD出たら買いですね。
TBさせていただきました。よろしくお願いします。
| manimani | 2006/07/30 10:49 AM |
manimaniさま

ご訪問ありがとうございました。そうですね、DVDで持っておきたい映画ですね。忘れないように買おうっと!
| Gil-Martin | 2006/07/30 11:47 AM |









http://gil-martin.jugem.jp/trackback/69
「胡同のひまわり」も「ローズ・イン・タイドランド」も
先週のココログメンテナンスで後回しになってしまいましたが、7月8日から小規模公
| 映画コンサルタント日記 | 2006/07/22 2:51 AM |
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| Mani_Mani | 2006/07/30 10:48 AM |
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