Gil-Martinの部屋

Gil-Martinの愛する音楽、感じたことなどなど

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もう見るものはない
"I've Seen It All" by Bjork

ラース・フォン・トリアーの映画の音楽について書いたので、続けて彼の映画のなかでもっとも音楽が重要だった映画、Dancer in the Dark(『ダンサー・イン・ザ・ダーク』)の曲について書くことにします。わたしにとって一番印象的だったのは、"I’ve Seen It All"でした。
Selmasongs: Dancer In The Dark (2000 Film)
Selmasongs: Dancer In The Dark (2000 Film)
Dancer in the Darkは、ある意味でラース・フォン・トリアーの実験的要素と商業的要素がもっともうまく噛みあった映画だったと思います。ミュージカルがパスティーシュとして使われながら、それでもミュージカル部分はミュージカル本来の力を発揮しています。地の語り部分で使われる手持ちカメラのあのぐるぐる感と、主人公セルマの妄想・ミュージカル部分の極彩色の美しい画像のコントラストが効果的でした。そして、セルマ/Bjorkの歌の幸せそうなところがまた、すごく不条理かつ可哀そうでした。もう大笑いするか、大泣きするかしかない二者択一の映画だったのです。
ダンサー・イン・ザ・ダーク
ダンサー・イン・ザ・ダーク
わたしが大泣きと大笑いのループに入ったのは、この"I've Seen It All"が歌われた部分からでした。実はわたし、Bjork扮するところのセルマが言っていることが60パーセントくらいしか理解できませんでした。だって、すごい訛りなんですもの。映画だと人々が自然にぼそぼそって話すことが多いので、訛っているとわかりづらい。アイスランド訛りなんでしょうか。他の人の言うことを頼りに話の内容を理解していたのです。でもBjorkは歌の部分だとはっきり何を言っているのかわかるんですよね。とは言っても、やっぱり英語が母語じゃないせいか、言葉のタイミングがちょっと違う気はします。Bjorkの個性なのかもしれませんが、彼女の歌、ここで切らないよね、っていうところで、言葉を切ったりするのです。

Bjork and Catherine映画の粗筋はこうです。東欧から移民してきたセルマは、だんだん眼が見えなくなりもうすぐ完全に盲目になる日が近づくなか、工場で働きながらお金を貯めて、同じ症状を抱える息子の眼を治してやろうと必死で明るく頑張っているけなげな女性。なのに、さまざまな不幸と不運と頑固さが重なって、彼女の運命は一層の闇のなかへ。……ゴージャスなカトリーヌ・ドヌーブが同じ工場で働いているところが摩訶不思議なのですが。

映画のなかでは、彼女を慕ってくれているジェフ(Fargoで有名になったPeter Stormare――フォン・トリアーの映画でおなじみStellan Skarsgardの息子の名付け親らしいです。スウェーデンつながりですね)に眼が見えないんじゃないのかと迫られて、答えるのがこの歌。貨物列車がやってきて、その荷台に載って踊りながら歌う部分ですね。「全部見たからいいの、見えなくったっていいの、見たいものは全部見た」、ととても美しい映像のなか晴れやかに歌いきります。つらい場面になるとすっと彼女が幻想の世界に入ってしまうところ、これが衝撃的な映画でした。わたしは彼女の現実認識の危うさにショックを受け、また同時にこの歌がとても美しいのに感動して、ダーッと滂沱の涙でした。この後はもうグスグス、ジュルジュルで最後まで。映画館を出るとき、かなり恥ずかしかったですが。

そして、映画のほうでは相手の俳優さんでしたが(だったと思うのですが)、サントラの方ではデュエットの相手はThom Yorkeなのですねん。同じ年に出たPJ Harveyのアルバム、Stories from the City, Stories from the SeaでPJ HarveyがやっぱりThom Yorkeとデュエットしていたので、その年、Thom Yorkeはわたしによってデュエットの王子様と認定されました。

映画の後、すぐ購入したサントラ、Selmasongsはしばらく聴くたびに泣きそうになりました。聴くたびにあの鮮やかな映像が眼に浮かんできて、条件反射でダーッ。"I’ve Seen It All"もそうですが、"In the Musicals"も現実逃避の強烈さに泣けます。「ミュージカルだったら、いつも誰かがわたしを受けとめてくれる」って……。一方、意外に絞首台に向かうときの歌は後で聞くと泣けませんでした。数、数えてるだけだし……。

ある意味、この映画Bjorkのビデオの曲のあいだを物語がつないでいるとも言えました。が、泣かせたのはラース・フォン・トリアーの力。それでもだんだん免疫がついちゃうんですよね。映画自体も一、二年後くらいに何度かインディ映画専門チャンネルで繰り返しやっていて、それを繰り返し見ているうちにそんな簡単には泣かなくなってしまいました……ちょっと残念。ビデオを購入してしまったBreaking the Wavesも五回目くらいには嗚咽しなくなりましたからね。って、ちょっとわたし、泣きすぎ! ですね。

正直言うと、泣かせてくれたラース・フォン・トリアーが懐かしい。嗚咽させてくれたラース・フォン・トリアーが。理性的に考えると泣いている自分に腹が立つような理不尽な話ばかりだったけど、それを忘れさせて泣かせるだけの力が彼の映画にはあったのになあ。最近の映画は理不尽さだけ。イデオロギーの主張に走りすぎているのねー(Michael Mooreじゃないんだからさ……、と言いたくなるところ)。残念、残念。

にしても、ともかくこの映画+サントラは、またわたしのBjorkへの興味を復活させてくれた点でもよかったかもしれません。BjorkはDebutがあまりにもよかっただけに、あらー、なんだかもう下がっていくだけなのかしら、アルバムはもう買うのやめようかと思っていた頃にこれが出て、Bjorkの力再発見、という感じでした。

原詞はこちらから

わたしはすべてを見た
歌詞:Bjork & Lars von Trier
訳:Gil-Martin

わたしはもう全部見たの
わたしは木々を見たし
わたしはそよ風のなかで踊っている柳の葉っぱを見た

わたしは親友の手によって殺される人を見た
そして寿命まで生きずに
絶たれる命を見た

自分がどんな人間なのかはもう見たの
それにどんな人間になるかもわかってる
もう全部見たの
何もこれ以上見るものはない

でも象は見たことないでしょ?
王様やペルーだって?
喜んで言わせてもらうけど
わたしには他に大事なすることがあった

じゃあ、中国は?
万里の長城は見たの?
どんな壁だっていいもの
屋根が崩れない限り

それで君が結婚する男に?
一緒に暮らす家は?
正直に言わせてもらえば
そんなことどうでもいいの

行ったことはないだろう?
ナイアガラの滝には?
水は見たことある
どうせ水よ、そうでしょ?

エッフェル塔は?
エンパイアステートビルディングは?
わたしの脈は同じくらい高かったわよ
生まれて初めてのデートのときには

それに君の髪をもて遊ぶ
孫の手は?
正直言えば
そんなこと別に構わないの

もう全部見てしまった
暗闇も見た
明るいところも見た
小さな火花のなかに
自分で選んだものは見た
必要なものも見た
それで十分
これ以上望むのは貪欲というもの

昔のわたしを見た
未来のわたしもわかってる
全部見てしまったの
これ以上見るものなんてないわ

君はもう全部見た
だから今までに見たものは
全部また見返すことができる
自分のなかの小さなスクリーンで
光と闇
大きなものと小さなもの
ただ覚えておけばいいんだ
もうこれ以上必要ないんだってことを

自分がどんな人間だかもう見てしまった
そして自分がどんな人間になるかも知っている
君は全部見た
これ以上見るものはもうない

*アーティスト:ビョーク
アルバム:セルマソングス
     「アイ'ブ・シーン・イット・オール」 


| gil-martin | 音楽 | 22:31 | comments(4) | trackbacks(0) |
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Hi!

I remember reading somewhere that Bjork described the shooting of 'Dancer In The Dark' as the most harrowing experience of her life. Apparently, Von Trier had her crying on set almost daily!

The technique worked, I guess, because she delivered a performance that was more powerful and convincing that most music artists who have appeared on film over the years.

I love 'Breaking The Waves', too. I'm a big fan of Emily Watson and Stellan Skarsgard. I've spent time in some of those Scottish towns where the majority of the men either work on the oil rigs or deep-sea fishing boats, and spend months away. It's tough on the wives who are left at home. The movie really captures that feeling of loneliness.

Another very underrated actress, Katrin Cartlidge, also appeared in that film. She died of cancer(?) a few years later...a big loss to European cinema...
| Atom Boy | 2006/03/23 2:22 PM |
Hi Atom Boy,

Thank you for visiting. Yes, I also remember Bjork's comment on her experience on set. Lars von Trier is not only known to be a difficult director, but also to be a misogynist...I am not sure this part from his attitude toward women in real life, but at least I know he keeps tormenting his helpless women in his movies!

I am also a huge fan of Emily Watson and Stellan Skarsgard. Seeing "Breaking the Waves" was enough to make me one. But I don't think Emily has done anything that matches her performance in "Breaking the Waves," although Stellan has several critically acclaimed movies under his belt. Atom Boy, do you have any movies with either of them you particually recommend?

I was also really sad when I heard the news about Katrin Cartlidge. She passed away in 2002. She had a real presence in that movie.


| Gil-Martin | 2006/03/24 8:52 AM |
"...do you have any movies with either of them you particually recommend?"

Emily Watson:
The Proposition (2005)
The Life and Death of Peter Sellers (2004)
Equilibrium (2002)
The Boxer (1997)

Stellan Skarsgard:
Taking Sides (2001)
Powder Keg (2001)
Aberdeen (2000)
Insomnia (1997)
The Unbearable Lightness of Being (1988)

| Atom Boy | 2006/03/24 2:45 PM |
Thank you, Atom Boy!
I haven't seen any of the Emily Watson movies you listed. I will go look for DVDs this weekend!
| Gil-Martin | 2006/03/25 7:48 AM |









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