2006.02.09 Thursday
夕食のテーブルで―泣ける曲4
"Dinner at Eight" by Rufus Wainwright
"I Eat Dinner (When the Hunger's Gone)" by Rufus Wainwright
今日の泣ける曲は、父と息子のあいだの葛藤に関する歌です。Rufus Wainwrightと言えば、Loudon Wainwright IIIとKate McGarrigleの息子であり、最近では妹のMartha Wainwrightもソロデビューしているので、まさに音楽一家のサラブレッドと言えるでしょう。そしてこの歌は、父親Loudon Wainwright IIIのことを歌った歌です。
LoudonとKateはRufusが小さい頃に離婚しています。そして、Kateは息子と娘を連れて、カナダのモントリオールへ引っ越しました。そしてかなり早いうちから、母親、叔母、妹とともに音楽活動を始め、十代のうちにゲイであることを公表しています。彼はRufus Wainwright個人として活動するようになってからも、母親のピアノや妹のバックボーカルを従えて活動していましたし、最初のアルバムに入っている"Beauty Mark"などを聴いても、母親に対する愛情は深く伝わってきます。David Lettermanに出たときも母親がピアノを弾いてました。
アメリカでもっとも影響力のあるDJといわれている、 Nic HarcourtのKCRW(サイトはこちら)の"Morning Becomes Eclectic"のアーカイブでは30分以上のスタジオライブの様子が見られます。
*Want Twoの曲を中心に、そしてBridget JonesのサントラでDidoとデュエットした母親の曲のカバー"I Eat Dinner"を母親のピアノで二人で歌っているところが見られるライブはこちら。
*Want Oneの発表時のライブ映像もこちら。
*Marthaのライブ映像はこちら……音楽一家の一員でありながら「何もしていない」プレッシャーのなかでどうやって最初のアルバムを創ったかということも話しているので、ファンには興味深いかも。
*Loudonのライブ映像はこちら……うーん、この髪! Rufusも危ないのか?

Want One
そんな母親との強い絆を持つRufusが父親との葛藤を歌ったのが、"Dinner at Eight"です。母親と自分たちを捨てた父親と大人になって再会する。子供だったRufusにはわからない大人の事情で自分たちを置いていった父親に対しては、いつまで経っても苦い感情が消えないのでしょう。再会して大人同士として仲良く食事をする。関係は修復されたように思えても、ちょっとしたことから二人の間に気まずい感情が生まれ、またけんかに発展してしまうわけです。Rufusは実際にはそれがショービジネスに関するけんかだったと言っていますが、それがここまでの苦い想いになるのは二人のあいだに横たわる溝のせいでしょう。
Rufusがカバーした母親の曲は、夕食がもうロマンティックなものではなく、ただ残り物を娘と二人で食べるようになった女性の哀愁を歌っています。Rufusの父親との和解を目指す男同士の夕食のテーブルの話としっかり対をなしているようにも思えます。夕食のテーブルはもっとも大事な人間関係が表れるところです。素敵な乾杯をしようが、その裏には見かけの華やかさでは隠しきれない葛藤があるかもしれない。一方、飾り気のない、もう心をときめかせるろうそくもおしゃべりもない、残り物だけを食べる夕食には乾いた絶望感がにじみ出ます。
父親が自分を愛していたことを自分自身に納得させようとするRufus。早くからゲイであることを公表していた彼と小さい頃から離れて暮らしていた父親はどうやって距離を埋めていったのでしょうか? 大人になった彼が雪の中、自分たちのもとを去った父親がそれでも自分を愛していたのだと自分に言い聞かせるとき、白い雪のなかで傷ついた心を自分で癒していく様子に涙が誘われます。
Loudonの名誉のために言っておけば、Rufusがこの曲の入ったアルバム、Want Oneを発表する前に父親に了解を取ろうと思って電話したら、何も言う前にLoudonはRufusに許可を与えたとどこかで読みました。自分の家族を自分も音楽のなかで表現してきたから、と言ったそうです。
(原詞はこちら)
八時の夕食
歌詞:Rufus Wainwright
訳: Gil-Martin
どんなにあんたが強くても
小さな石一つで倒してやる
ばらばらにしてあんたの価値を見てやる
一体あんたが僕にとってどれだけの価値があるのかを
きらきらした乾杯の前は八時の夕食はまあまあだった
あの古い雑誌を眼にする前まではすごくよかった
そのせいでまた始まってしまったんだ
多分、また僕のせいだったのかもしれない
でもなんでこうなんだろう?
いつも立ち去るのはなんで僕なんだ?
行ってしまえと言われるのはなんでいつも僕なんだ?
実際にはあんただった
ずっと前、白い雪が吹きつけるなか
僕を置いていったのは
だから両手のこぶしを構えろよ、僕もそうするから
事件現場から逃げるなんてことはしない
神様が場所を選んだんだ
世界の果てに近いどこかに
僕たちの命の終わりに近いどこかに
でもそれまでは驚かないで、パパ
あんたの眼に涙が浮かぶのを見たかったら
そしたら、そうじゃなきゃいけなかったんだとわかると思う
ずっと前、白い雪が吹きつけるなか
あんたは僕を愛していた
(原詞はこちら)
夕食を食べる(もう空腹ではないけれど)
歌詞:Kate McGarrigle
訳:Gil-Martin
わたしはキッチンテーブルで夕食を食べる
13歳の娘と一緒に
残り物とマッシュポテトを食べる
火のついたろうそくなんてない
ロマンスなんてない
おしゃべりもない
もう空腹でもない
わたしはキッチンテーブルで夕食を食べる
食べ物をソーダで流し込む
残り物とマッシュポテトを食べる
火のついたろうそくなんかない
ロマンスもない
おしゃべりもない
もう空腹なんか感じない
こんなふうになるなんて思ってもみなかった
きらきらしたものが好きなわたしが
わたしの髪が白くなるなんて思ってもみなかった
あんなに黒かったのに
こんなふうになるなんて思ってもみなかった
夜が大好きだったわたしが
キスもしなくなるなんて思ってもみなかった
誰かのために明かりを消すこともなくなるなんて
明かりを消す相手もいないなんて
わたしはキッチンテーブルで夕食を食べる
13歳の娘と一緒に
残り物とマッシュポテトを食べる
ろうそくの火も
ロマンスも
おしゃべりもない
空腹も去ってしまった
*アーティスト:ルーファス・ウェインライト
*作品:ウォント・ワン
「ディナー・アト・エイト」
*アーティスト:ルーファス・ウェインライト&ダイドー
*作品:「アイ・イート・ディナー」
"I Eat Dinner (When the Hunger's Gone)" by Rufus Wainwright
今日の泣ける曲は、父と息子のあいだの葛藤に関する歌です。Rufus Wainwrightと言えば、Loudon Wainwright IIIとKate McGarrigleの息子であり、最近では妹のMartha Wainwrightもソロデビューしているので、まさに音楽一家のサラブレッドと言えるでしょう。そしてこの歌は、父親Loudon Wainwright IIIのことを歌った歌です。
LoudonとKateはRufusが小さい頃に離婚しています。そして、Kateは息子と娘を連れて、カナダのモントリオールへ引っ越しました。そしてかなり早いうちから、母親、叔母、妹とともに音楽活動を始め、十代のうちにゲイであることを公表しています。彼はRufus Wainwright個人として活動するようになってからも、母親のピアノや妹のバックボーカルを従えて活動していましたし、最初のアルバムに入っている"Beauty Mark"などを聴いても、母親に対する愛情は深く伝わってきます。David Lettermanに出たときも母親がピアノを弾いてました。
アメリカでもっとも影響力のあるDJといわれている、 Nic HarcourtのKCRW(サイトはこちら)の"Morning Becomes Eclectic"のアーカイブでは30分以上のスタジオライブの様子が見られます。
*Want Twoの曲を中心に、そしてBridget JonesのサントラでDidoとデュエットした母親の曲のカバー"I Eat Dinner"を母親のピアノで二人で歌っているところが見られるライブはこちら。
*Want Oneの発表時のライブ映像もこちら。
*Marthaのライブ映像はこちら……音楽一家の一員でありながら「何もしていない」プレッシャーのなかでどうやって最初のアルバムを創ったかということも話しているので、ファンには興味深いかも。
*Loudonのライブ映像はこちら……うーん、この髪! Rufusも危ないのか?

Want One
そんな母親との強い絆を持つRufusが父親との葛藤を歌ったのが、"Dinner at Eight"です。母親と自分たちを捨てた父親と大人になって再会する。子供だったRufusにはわからない大人の事情で自分たちを置いていった父親に対しては、いつまで経っても苦い感情が消えないのでしょう。再会して大人同士として仲良く食事をする。関係は修復されたように思えても、ちょっとしたことから二人の間に気まずい感情が生まれ、またけんかに発展してしまうわけです。Rufusは実際にはそれがショービジネスに関するけんかだったと言っていますが、それがここまでの苦い想いになるのは二人のあいだに横たわる溝のせいでしょう。
Rufusがカバーした母親の曲は、夕食がもうロマンティックなものではなく、ただ残り物を娘と二人で食べるようになった女性の哀愁を歌っています。Rufusの父親との和解を目指す男同士の夕食のテーブルの話としっかり対をなしているようにも思えます。夕食のテーブルはもっとも大事な人間関係が表れるところです。素敵な乾杯をしようが、その裏には見かけの華やかさでは隠しきれない葛藤があるかもしれない。一方、飾り気のない、もう心をときめかせるろうそくもおしゃべりもない、残り物だけを食べる夕食には乾いた絶望感がにじみ出ます。
父親が自分を愛していたことを自分自身に納得させようとするRufus。早くからゲイであることを公表していた彼と小さい頃から離れて暮らしていた父親はどうやって距離を埋めていったのでしょうか? 大人になった彼が雪の中、自分たちのもとを去った父親がそれでも自分を愛していたのだと自分に言い聞かせるとき、白い雪のなかで傷ついた心を自分で癒していく様子に涙が誘われます。
Loudonの名誉のために言っておけば、Rufusがこの曲の入ったアルバム、Want Oneを発表する前に父親に了解を取ろうと思って電話したら、何も言う前にLoudonはRufusに許可を与えたとどこかで読みました。自分の家族を自分も音楽のなかで表現してきたから、と言ったそうです。
(原詞はこちら)
八時の夕食
歌詞:Rufus Wainwright
訳: Gil-Martin
どんなにあんたが強くても
小さな石一つで倒してやる
ばらばらにしてあんたの価値を見てやる
一体あんたが僕にとってどれだけの価値があるのかを
きらきらした乾杯の前は八時の夕食はまあまあだった
あの古い雑誌を眼にする前まではすごくよかった
そのせいでまた始まってしまったんだ
多分、また僕のせいだったのかもしれない
でもなんでこうなんだろう?
いつも立ち去るのはなんで僕なんだ?
行ってしまえと言われるのはなんでいつも僕なんだ?
実際にはあんただった
ずっと前、白い雪が吹きつけるなか
僕を置いていったのは
だから両手のこぶしを構えろよ、僕もそうするから
事件現場から逃げるなんてことはしない
神様が場所を選んだんだ
世界の果てに近いどこかに
僕たちの命の終わりに近いどこかに
でもそれまでは驚かないで、パパ
あんたの眼に涙が浮かぶのを見たかったら
そしたら、そうじゃなきゃいけなかったんだとわかると思う
ずっと前、白い雪が吹きつけるなか
あんたは僕を愛していた
(原詞はこちら)
夕食を食べる(もう空腹ではないけれど)
歌詞:Kate McGarrigle
訳:Gil-Martin
わたしはキッチンテーブルで夕食を食べる
13歳の娘と一緒に
残り物とマッシュポテトを食べる
火のついたろうそくなんてない
ロマンスなんてない
おしゃべりもない
もう空腹でもない
わたしはキッチンテーブルで夕食を食べる
食べ物をソーダで流し込む
残り物とマッシュポテトを食べる
火のついたろうそくなんかない
ロマンスもない
おしゃべりもない
もう空腹なんか感じない
こんなふうになるなんて思ってもみなかった
きらきらしたものが好きなわたしが
わたしの髪が白くなるなんて思ってもみなかった
あんなに黒かったのに
こんなふうになるなんて思ってもみなかった
夜が大好きだったわたしが
キスもしなくなるなんて思ってもみなかった
誰かのために明かりを消すこともなくなるなんて
明かりを消す相手もいないなんて
わたしはキッチンテーブルで夕食を食べる
13歳の娘と一緒に
残り物とマッシュポテトを食べる
ろうそくの火も
ロマンスも
おしゃべりもない
空腹も去ってしまった
*アーティスト:ルーファス・ウェインライト
*作品:ウォント・ワン
「ディナー・アト・エイト」
*アーティスト:ルーファス・ウェインライト&ダイドー
*作品:「アイ・イート・ディナー」