Gil-Martinの部屋

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完全なる自由―泣ける曲1
"At Last I Am Free" by Robert Wyatt

今週は、どういう理由であれ泣ける曲について書いてみます。泣けるといっても、聴いた途端ぼろっと涙がこぼれるというほどではなく、気分によってはあまりの悲しさであれ、惨めさであれ、美しさであれ、感動であれ、もろもろの理由で泣けそうになる曲のことです。

初回の今日は、素晴らしいカバーの一例でもあります。Robert WyattがChicのディスコナンバーをカバーした、"At Last I am Free"。なんだか聴くたびに涙が出そうになります。
Nothing Can Stop Us
Nothing Can Stop Us

Robert Wyattという人の代表曲は、わたしにとっては"Alifib"とか"Sea Song"なのですが、この曲もかなり有名だと思います。Soft Machineというポスト・サイケデリックのカンタベリーシーンのバンドにいた(ごめんなんさい、さっぱり訳わからないまま書いてますが、プログレシッブ・ロックのバンドだったわけですね)彼は、そこから離れてソロになって最初のアルバムを1971年にリリースした後、パーティの最中、窓から落ちて半身不随になります。当時のことですから、酒だけではなく、何か別のものせいで空を飛べる気になったのかもしれないですね。その後、すぐに出したアルバムのタイトルは、Rock Bottom(1974)。文字通り、人生はどん底という感じだったんでしょう。しかし、それから彼は着実にアルバムを作り続け、確固たるファンベースを築いていっているようです。音楽性としては、わたしはなんと描写していいかわからないけれど、どうやらアート・ロックというみたいです。

“At Last I am Free”という曲は、ディスコグループChicのバラードのヒット曲。ということは、チークタイム用の曲なんでしょうね。 従って歌詞としては他愛のない曲です。あなたとはもうさようなら、あなたの愛は本物じゃなかったわ、という歌です。でも、Robert Wyattのファルセットで歌われると、違うレベルの話のような気がしてくるのです。

天上の歌声、と誰かが言ってたような気がしなくもないのですが、Robert Wyattの外見自体は元ヒッピーによくありそうな、少々長髪のあごひげのおじさんです(そのお姿が拝めるウェブサイトはこちら)。よくマリワナ合法化運動を推進してそうな感じの。実際、彼はかなり左寄りの思想の持ち主で、政治的な歌詞もあるし、また実際に政治的な活動もしているみたいです。こういう人、尊敬してしまいますね。ずっと信念を貫き通しながら歳を取っていく人。

わたしが感動してしまうのは、この歌を聴くたび、彼が彼自身を車椅子に縛り付けている肉体からとうとう自由になったと言っているような気がするからです。恋人との別れのつらさのあまり、涙がにじんで眼の前がはっきり見えない、と言っている部分が、まるで光に包まれて――昇天していくときのように――まぶしくて周りは何も見えないと言っているような気がします。それほど彼の声は、何かを超越している気がするのです。解放感というのか。とうとう本当に自由になった、そう、もう何にも悩まされることはないのだ、と。そういう意味で、わたしの葬儀にかけて欲しい曲です。いや、わたしのこの人生もかなり自由なんですけど。

何なんでしょうね、この人の声。特に美しい声とは言えないし、特に歌がうまいわけでもないと思うんだけど、聴くと肩甲骨の下あたりから力が抜けていくような気がするのです。もちろん、この人の歴史を考えて感動が増すということもありますが。そういう意味で、一度聴いていただきたい人です。

しかし、もしかしたら、彼は日本で人気、とかいうパターンの人なんでしょうか? その辺りはよくわかりませんが、日本独自編集のベスト盤His Greatest Missesが出ています。
ベスト・オブ・ロバート・ワイアット~ロバート・ワイアット30年の軌跡
ベスト・オブ・ロバート・ワイアット~ロバート・ワイアット30年の軌跡
最近のアルバム、Shleep(1997)やCuckooland(2004)も良いアルバムでした。この人のアルバムを買わなくても、BjorkのMedulla(2004)というアルバム中、"Submarine"でコーラスに参加しているので、彼の声を聴いたことがある人は結構いるはずです。Bjorkの曲を乗っ取って彼の曲にする勢いでした。というほど、彼の声のインパクトが強いんですよね。ぜひ聴いてみてください。

(原詞はこちら)

アト・ラスト・アイ・アム・フリー
歌詞: Bernard Edwards/Nile Rodgers
訳:Gil-Martin

とうとうわたしは自由になった
眼の前がぼやけてほとんど見えない
眼の前がぼやけてほとんど見えない

愛する人よ、わたしの言うことを聴いておくれ
こんなふうに生きていくことはできない
努力したし、あなたにわかってもらおうという努力もした
あなたはこれを愛と呼ぶけれど
それは嘘なのだろう、そうでしかあり得ない

とうとうわたしは自由になった
眼の前がぼやけてほとんど見えない
眼の前がぼやけてほとんど見えない

愛する人よ、抱きしめて
こっちに来て
あなたのそばにいるだけで
とてもいい気分だ
だけどわたしは誰を欺いているんだろうか
本物ではないとわかっているのに
自分のなかで感じている心の傷や痛みは隠すことができてはいても

とうとうわたしは自由になった
眼の前がぼやけて何も見えない
眼の前がぼやけて何も見えない

アーティスト:ロバート・ワイアット
作品:ナッシング・キャン・ストップ・アス
   「アト・ラスト・アイ・アム・フリー」
| gil-martin | 音楽 | 23:46 | comments(5) | trackbacks(0) |
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そうなんですか。。何気なく聴いていたロバート・ワイアット、もう一度引っ張り出してみますね。なんか、訳詩で泣けてきてしまいました。
| ママロック | 2006/02/09 10:13 AM |
ママロック様

とてもうれしいコメント、ありがとうございました。背景を考えるとつくづく感心するアーティストだと思います。本当に「泣ける曲」ですよね?
| Gil-Martin | 2006/02/09 10:15 PM |
対訳、どっかに出てないかなーと思って、探していました。
ありがとうございます。しかも詳しい解説まで。
いい歌ですよね。とても参考になりました。
以上です。
| 青山町ばんざい | 2006/10/04 9:35 AM |
 ロバート・ワイアットのこの曲、探していたんです。
20年以上も前にサンプルLPで聴いて感動した曲だったので、訳詩も嬉しい限りです。
詳しい解説も勉強になりました。
有難うございました。
| レザック66 | 2007/12/08 6:54 PM |
私もふと思い出しました。
ニューウエーブという旋風が
吹いていた頃の曲で
よく繰り返し聞いていました。
| koo | 2012/08/31 12:16 AM |









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